Ballet Factory

高橋森彦 バレエ&ダンス逍遥 Special Interview

風間無限~無限大の可能性を秘めた繊細なる感性

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ドイツに留学し、アメリカのカンパニーを経て2010年夏に帰国、日本での活動を本格的に開始した気鋭の若手がいる。風間無限。 25歳。2011年2月に行われた、ジャンルを超えた男性トップダンサーたちが集う舞台『GQ Gentleman Quality –紳士の品格-』では、伸びやかにして小気味いい踊りを披露し目を惹いた。同年10月にはCSB International 特別記念DANCE公演 『 Special Evening 』の新上裕也作品に出演し、精神性高く磁力ある踊りをみせる。鍛錬され引き締まった体を誇り、癖のない身体使いが持ち味。 役柄に真摯に向きあって繊細な感性を反映させる貴重な資質を誇る踊り手だ。 プロフィール詳細

風間は幼少から父親である保志克巳に師事する。保志は、かつて一世を風靡した独創的な創作で知られる堀内完のユニークバレエシアター出身。 ニューヨーク留学中にはバレエやモダンダンスを学び、ルイジ・ファチュートからジャズダンスの指導を受ける。

小さい頃よく父のスタジオで遊んでいました。家でパーティーするときには音楽がかかっていて「踊ってみろ!」と言われる。踊りが生活のなかにある感じ。 父は「ウェストサイド物語」などのミュージカルが盛り上がっている時期のニューヨークに留学していました。 「若いうちに外の世界に触れたほうがいい」という父の言葉が耳に残っていました。

5歳から16歳(高校1年生)までは父親に学ぶ。1996年、10歳のとき大きなチャンスが舞い込む。モーリス・ベジャールが東京バレエ団に振付けた『M』に出演することになるのだ。 作家・三島由紀夫の生と死を題材にした大作において三島の少年時代を演じる。

三島少年役の2代目でした。子役のオーディションの話があったのですが『M』のものとは知りませんでした。 ベジャールさんがいらして「スタジオをちょっと走ってみろ」とか言われたのを覚えています。直々に選んでいただけてうれしかった。

振付指導は当時、東京バレエ団の芸術監督を務める溝下司朗が行った。東京バレエ団第15次海外公演に参加し、ドイツのベルリン・ドイツ・オペラ、ハンブルク州立歌劇場で行われた公演に出演した。 ベジャールも観劇し、終演後ねぎらいの言葉をかけてくれたという。

リハーサルでは溝下先生に『M』がどういうバレエか、武士道とは何かといったことをお聞きしました。 父親からもそういうものを大切にしろと言われた。そういった言葉や東京バレエ団のプロフェッショナルな空気に接するうちに「舞台に立つ感覚」が自然に生まれていったのではないでしょうか。 本番では聖セバスチャン役の首藤康之さんに薔薇の花を持って行ったときの首藤さんの息づかいや匂いが印象に残っています。 そこにいたのは紛れもなく聖セバスチャンでしたね。舞台に立つ以上、思いをすべてのシーンにこめたい。そう思いました。

『M』への出演と前後して芸術性豊かな児童を、バレエ教育を通して育成する日本ジュニアバレエのメンバーに選抜される。 在籍中には、牧阿佐美バレヱ団『くるみ割り人形』のフリッツ役を4年連続務めた。 その後、オーディションを受け東京バレエ学校ボーイズクラスの第1期生となる。2002年には第1回「文化庁新進芸術家国内研修生」に選ばれた。

ジャック・カーター版(当時)『くるみ割り人形』には子役の出る場面が多く、作品のなかに息づくことの大切さを教わりました。 厳しくも優しくご指導いただいたのを覚えています。東京バレエ学校では溝下先生や森田雅順先生に習いました。 溝下先生には基礎をみっちり教わりました。「上半身が美しくあるべき」というご指導でした。 ベジャールさんの『ザ・カブキ』に出る機会も。歌舞伎座の「仮名手本忠臣蔵」を観に行ったりもしました。 様々な背景を知っていた方が踊りやすい。思いがあって踊りたいというのは昔からありますね。

父の影響もあって「雨に唄えば」「ウェストサイド物語」といったミュージカルを愛し、ジーン・ケリー、フレッド・アステアといったスターに憧れていた風間は、アメリカに留学することを考えていたという。 「ABT Summer Intensiveスカラシップ賞」、「Youth American Grand Prix」 銀賞を受賞し、スカラシップの話がいくつか舞い込むが、17歳のときドイツのジョン・クランコ・バレエ・スクールに留学する(スカラシップ給付)。

同スクールのタデウス・マタチ先生にお話をいただきました。レッスンは楽しくも厳しかった。 ウラジーミル・マラーホフの先生として知られ昨夏亡くなられたピョートル・ペストフ先生らに付きました。コンテンポラリーや即興、マイム、フラメンコ、それにヒップホップのクラスも受けました。 自作発表の機会も。映画「第三の男」のテーマ曲を使ってプレイボーイ役をやりました。気取った小さな帽子、ノースリーブの上着、パンツすべて黒で、ニコニコマークのネクタイを付けて踊る。 こっちの彼女、あっちの彼女と声を掛けてはフラれたりする。でもって、鏡を見て自分を確認(笑)。そういうのを作りました。

学校生活を謳歌していた風間であったが、膝を壊し手術したこともあって卒業テスト受けられず、致し方なく一年留年するという不運に見舞われた。 無事卒業するも就職のため、いろいろなカンパニーを回るなかで、日本人であること、身長が足りないというようなことがハンディになり、履歴書応募の時点で落とされることも少なくなかったようだ。 そんななか、幼いころからの憧れでもあったアメリカで踊りたいと思うようになる。

ニューヨークでタルサ・バレエのオーディションを受け入団しました。 芸術監督がイタリア人(マルチェロ・アンジェリーニ)ということもあり、ヨーロッパのダンサーもたくさんいました。 レパートリーがよく、イリ・キリアンやナチョ・ドゥアトらの作品も持っていました。タルサ(オクラホマ州東部)が拠点。 オクラホマシティ(州都)やワシントンでも公演しました。油田のある地域でスポンサーがしっかりしている。 団員は30人弱。プラス10人のセカンドカンパニーがあって大方の演目をまかなえる。年間公演数は60回くらい。300人くらい入る小劇場をスタジオに持っていて、若手中心にクリエーションする機会もありました。

公演ではソリスト役を務めることも多く、ソリストの契約も得ていた。充実したダンサー生活を送っていたが、4年間踊って退団を決意するに至る。

自分の資質を活かせるバレエ団でした。タルサという土地も大好き。荒野をドライブしたり、キャンプしたり、釣りをしたりするのも好きでした。居心地がいい。 あと一年いたら離れられなくなる。新しいことに挑戦して、もっと戦わなくちゃいけない、と思いました。

2010年夏に帰国。オープンクラスを回るうちに知りあったバレエダンサー吉本真悟との出会いが転機をもたらす。 2011年2月の『GQ Gentleman Quality –紳士の品格-』出演が決まった。

真悟さんもアメリカで踊った(サンホセ・バレエ団、ヒューストン・バレエ団)のち帰国された。同じような境遇にある先輩。新上裕也さんを紹介していただき『GQ』へ出演することになりました。 その後、年末のリハーサル開始までの約3ヶ月間、友人の家に泊まってヨーロッパを回り、さまざまなカンパニーの公演を観ました。その際、自分ひとりの時間がたくさんあったので、いろいろ考えました。 そして、「日本から何か発信したい」と思うに至りました。そのとき『GQ』に出ること以外何も決まっていませんでしたが…。

ジャンルの枠を超えた男性トップダンサーが競演した『GQ Gentleman Quality –紳士の品格-』はアートとエンターテインメントが交錯する熱い舞台となり、東京・サンシャイン劇場で行われた6公演がソールドアウト。 6月には大阪公演も行われた。演出・振付の新上裕也、振付のTETSUHARUら一線級の踊り手との共演に刺激を受けたようだ。

皆が一流。そのうえ互いに興味を抱いていました。ストリートダンスの人がプリエを始めたり、逆にストリートダンスの人のウォームアップをバレエの人が取り入れたり、 スニーカーを履いた人が「そのピルエット、どうやるの?」と興味津々だったり…。 何かのきっかけでスイッチが入るとリハーサルが熱く盛り上がる。毎日そういうことが起こっていくなか皆さんと作り上げた舞台で幸せだった。 カーテンコールに立ったとき、バレエ団を辞めて日本に帰ってきたこと、この舞台に出たことが間違いじゃなかったと思いました。

今年最初の大舞台が東京小牧バレエ団公演『マダレナ』。東北の寒村を舞台に、江戸幕府によるキリシタン弾圧のもと、散っていった若い男女の恋を描くものだ。 その主役の青年マチアス役に抜擢された。戦後バレエの先駆者・小牧正英の系譜を継ぐ名門への客演となる。小牧の出生地・岩手を舞台とした定評ある作品。被災地への鎮魂をこめた公演でもある。

キリシタン弾圧の歴史と向きあって演じたい。また、マダレナ役の藤瀬梨菜さんと若者の純粋な恋を、どのように表現していこうか探っています。 リハーサルが始まって、すべてが大切というか、踊ってないところも踊りであるし、みんなで創りあげていくものだと感じました。 こういった「和のバレエ」はなかなか無いですし、ドラマのある作品が好き。ベジャールさんの『ザ・カブキ』『M』を「和もの」 といえるか分からないけれども、そういった作品に出させていただいたこともあって『マダレナ』には思い入れがありますね。

5月には所属するCSB International 主催『Delicious』へ出演する。振付・Art Direction:新上裕也、演出・作・構成・振付:増田哲治(TETSUHARU)。 中島周、蔡暁強、吉本真悟、大野幸人、宮垣祐也、新上裕也、TETSUHARUという個性派メンバーとの共演だ。

CSBオールスターによるエンターテインメント。皆さんと共に作り上げます。出演者には、それぞれの(身体の)言葉がある。 踊っているとき異世界に行けるような人たちばかり。皆さんと、どういった会話ができるのか楽しみですね。お客様に今までご覧になったことのないようなダンス・エンターテインメントをお贈りできるのではないかと思います。

最後に「どんなダンサーになりたいか?」を聞こうと準備していたが止めた。自らの可能性を模索する途上にある彼に対し愚問以外の何物でもないだろう。 一つひとつの舞台への取り組みの熱心さ、入り込み様には並みならぬものがあると感じた。若くして求道者のような趣もある。風間の将来に無限大の可能性があることを信じ、その動向を見守りたい。

今後出演の公演

東京小牧バレエ団

『マダレナ』『ジゼル』第2幕『ブラックスワン』パ・ド・トロワ

  • 【芸術監督】菊池宗
  • 【演出・振付】佐々保樹・酒井正光
  • 【出演】市河理恵、A・ドゥガラー、風間無限、他
  • 【日程】2012/3/17(土)18:30、18(日)15:00
  • 【会場】新宿文化センター大ホール
  • 【料金】S席8,000円 A席7,000円 B席5,000円 C席3,000円
  • 【問い合わせ】東京小牧バレエ団 TEL:03-3377-7764
  •  http://www.komakiballet.jp/
CSB International presents『 Delicious 』
  • 【振付・Art Direction】新上裕也
  • 【演出・作・構成・振付】増田哲治(TETSUHARU)
  • 【CAST】中島周、蔡暁強、吉本真悟、大野幸人、風間無限、宮垣祐也、TETSUHARU、新上裕也
  • 【日程】2012/5/4(金)祝 15:00 / 19:00 2012/5/5(土)祝 15:00 / 19:00 2012/5/6(日) 14:00 / 18:00
  • 【会場】クレイドルホール(青山ベルコモンズ9F)
  • 【料金】6,500円(税込) 全席指定
  • 【チケット申込】CSB International TEL:03-5771-4281(平日11:00~18:00)
  •  http://www.csb-international.info/(24時間受付)