大人からのバレエ推進委員会監修

高橋森彦のバレエ&ダンスの逍遥

高橋森彦

舞踊専門紙誌、美術誌、芸術批評誌、バレエ公演プログラム、公演チラシ、Web媒体等に公演評・解説・紹介記事・インタビュー記事を寄稿する。

バレエ、コンテンポラリー・ダンスなど洋舞のほか演劇等も含めたパフォーミングアーツ全般に関心。

公式ブログ「ダンスの海へ」

http://d.hatena.ne.jp/dance300

CSB International『GQ〜Chocolat~ヘンゼルとグレーテルより』
〜フィジカルな興奮に満ちた贅沢極まりないダンスの饗宴

2011年最もエネルギッシュなダンスエンターテインメント!!”を標榜する舞台が行われた。 『GQ〜Chocolat~ヘンゼルとグレーテルより』。演出・振付の新上裕也を中心に、ダンス・シーンの一線で活躍する男性ダンサーが集結したステージである。GQとは、Gentleman Quality=紳士の品格を意味する。内外のトップ・アーティストと共演を重ね、 演出・振付家としても活動の幅を広げる新上が近年テーマにしているものだ。 2009年6月には『GQ〜男たちの晩餐』という一晩ものの公演が行われた。男という生き物は、ときに粗野で凶暴であったりする。だが、卑劣に陥ることのない矜持も備えた存在でもある。 新上はそれを信条としているのだろう。本能と理性のあいだをさまよう男たちの生き方を鮮烈に描いて反響を呼んだ。

『GQ』シリーズ長編第2作となる新作は、グリム童話収録「ヘンゼルとグレーテル」をモチーフにしている。 「母親に捨てられた兄妹が森で道に迷い、森の奥に棲む魔女に騙され囚われの身になるが・・・」という、よく知られた話だ。それを新上流に膨らませて独自の物語を生む。 2幕構成で、前半はヘンゼルとグレーテルを案内役にお菓子の家へ招かれるさまざまな人たちが紹介されていく。 後半は、お菓子の家に集まった男たちが、欲望や混沌に塗れたなか、激しいダンスを繰り広げた。 1幕が終わる前に豪華なお菓子の家が姿を現し、後半への興味を高める。 2幕の晩さん会の場面では、欲望に翻弄され、混乱のなかでしだいに狂っていく男たちのダンスに圧倒されざるを得ない。 ヘンゼル役には新上の盟友で多くのコンサート・舞台等において振付・演出を手掛けるTETSUHARU(演出・構成協力・振付)が扮し、 グレーテルは子役の村田永治、妖精モミーをミュージカル中心に幅広く活躍する蔡暁強(CAIXIAOQIANG)が、

Coral Reef

魔女をヒップホップ界の大物SHINICHIが演じた。バレエ、コンテンポラリーダンス、ストリートダンスといったジャンルを超えた一流の踊り手たちが妙技を魅せ、 存在をアピールしていく。上記のほか佐々木大、法村圭緒、中島周、吉本真悟、横関雄一郎、福原大介、風間無限、長澤風海、Joey Beni、青木尚哉、鈴木陽平、背戸田勝敏、廻修平、大野幸人、永野亮比己、大貫勇輔、加賀谷一肇、宮垣祐也、そして新上らが出演した。名実ともに一流のダンサーが揃うが、 彼らがときにダイナミックに、ときにコミカルに、ときにエロチックに踊るダンスが、つるべ打ちのように展開された。贅沢極まりないダンスの饗宴。 甲乙付け難いが、ことに蔡の、超絶技巧を軽やかにこなしながらくるくると表情を変えていく曲者ぶりは圧巻だった。 グリム童話は残虐さを秘めてもいる。暴力的でドロドロした下品な仕上がりになってもおかしくないけれども、新上はその愚に陥らない。

Coral Reef

選りすぐりの踊り手たちの高い技量と個性を活かし登場人物のキャラクターをいきいきと立ち上げる。 増田俊郎により書き下ろされたスケール感ある音楽、自在に時空間を変容させる石井みつるの舞台美術といった巨匠スタッフとの協同作業が世界観を深める。 舞台を構成するあらゆる要素に新上の感性が反映され、寓意と謎に富む物語、怒涛のごとく押し寄せるダンスの洪水のなかに透徹した美学が感じられた。 そして、物語性もあるが、ダンスとは「分かる」ものでなく「感じる」ものという、フィジカルな興奮ありきの姿勢が全編を貫く。 ダンス大好きな人間には堪えられない舞台だ。身体表現の雄弁さによって独自の世界観を醸成し、観るものに贅なる感動を供する。アートとエンターテインメントの融合を志向する新上とその仲間たちの挑戦に拍手を送りたい。

(2011年2月11日 サンシャイン劇場)
撮影:藪内努

『 GQ Gentleman Quality -紳士の品格-
Chocolat ショコラ 〜ヘンゼルとグレーテルより〜 』

■大阪公演情報■

【日時】2011年6月7日(火)、8日(水)19時開演
【会場】森の宮ピロティホール
【料金】9,500円(全席指定・税込)
【発売日】4月10日〜
【問い合わせ】CSB International http://csb-international.info/
 (東京公演とは一部出演者が異なる) >>詳細ページ