大人からのバレエ推進委員会監修

高橋森彦のバレエ&ダンスの逍遥

高橋森彦

舞踊専門紙誌、美術誌、芸術批評誌、バレエ公演プログラム、公演チラシ、Web媒体等に公演評・解説・紹介記事・インタビュー記事を寄稿する。

バレエ、コンテンポラリー・ダンスなど洋舞のほか演劇等も含めたパフォーミングアーツ全般に関心。

公式ブログ「ダンスの海へ」

http://d.hatena.ne.jp/dance300

La Danse Compagnie Kaléidoscope
『Anniversary 15th』万華鏡のごとく変幻自在な二見ワールドの魅力全開

nouvelle danse

ヌーベル・ダンスは フランス語で「新舞踊」の意。1980年代にフランスで急速に盛んになった新しいダンスの潮流。コンテンポラリー・ダンスの一種といっても間違いではない。ドイツのダンスシアター、アメリカのポストモダン・ダンス、日本の舞踏などの影響を取り入れている。ダンサー・振付家ではアンジュラン・プレルジョカージュ、マギー・マランなどが世界的に有名。 ( 鈴木晶 舞踊評論家 )

Contemporary dance
wikipedia

The Dance Times
http://www.dance-times.com/

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DV8フィジカル・シアター:モノクローム・メンの死の夢 [DVD]

ダンス・バイブル---コンテンポラリー・ダンス誕生の秘密を探る

パーソンズ・ダンス・カンパニー [DVD]

積極的な公演活動と若手の成長

ダンスカンパニーカレイドスコープ率いる二見一幸の活躍が目覚ましい。 新作公演、旧作再演、メンバーによる創作発表の企画、若手集結の公演を積極的に展開し、 都内の劇場や主宰するスタジオDance Brick Box(神奈川県大和市)において定期的に自主公演を行っている。外部への振付提供も少なくない。 若いダンサーからの信望厚く、彼と公私のパートナー田保知里のもとからは、有望な踊り手がどんどん育っている。 現代舞踊の大家のひとりとして名を馳せた故・庄司裕に学び、パリに留学した両者が帰国後カンパニーを設立してから今年で15年。 それを記念して新作3本と旧作1本による公演を行った。文字通り万華鏡のごとく変幻自在な二見ワールドの魅力が全開した記念碑的公演になったと思う。

高密度な振付、時空間とダンスの豊かな融合

二見作品の特徴として独自のムーブメントの追求があげられる。基礎鍛錬のしっかりできた踊り手を用い、 フランス仕込みのヌーヴェル・ダンスやコンテンポラリーな質感の振付を咀嚼して生んだ多彩な舞踊語彙を詰め込む。 密度の濃い振りながら、重くなく、淀みなく流れるような質感を持っている。この日最後に上演された新作『Schwaz Elian』もそうだ。大きな電光掲示のタイマーが時を刻み、ノイズ音等が流れるなか、二見のソロに始まり、田保、中村真知子、 大竹千春ら男女7人の一線級がソロ、デュオ軸に複雑精緻な振付を一分の隙なく踊り継いでいく。オフ・バランス、スローな動き、 上体をグニャグニャさせた動き等が複雑に組み合わさるが、ダンサーたちの軸は安定し、それでいて背中等の動きに硬さは微塵もなく滑らか。 刻まれていく時間、繊細な照明によって変化していく空間、それに緻密なダンスが、これ以上ないというくらい絶妙なバランスで溶けあっている。

二見振付の幅の広さを存分に発揮

残りふたつの新作は二見振付の幅の広さを存分に示した。 若手女性12名による『ダンツァ・ディ・トランセ』は「トランス状態に陥った修道女、 というイタリアの話がモチーフ」(インターネット舞踊誌 「The Dance Times」掲載、安藤絵美子による二見へのインタビューより)。 幕開けは、下まで降りている黒幕をダンサーがたくし上げ、腰の位置で動き始め、くぐって出てくるという意表突くもの。白のシースルーの上着に短いスカート姿の彼女たちは、その後、熱量十分に踊っていく。 気鋭の佐藤伊都美ら俊英揃いだが、目立ったソロ・パートはなく、集団全体の動きの連鎖のなかに立ちのぼるエナジーが観るもののテンションをも高めた。 『Zippy』は二見や小出顕太郎、西澤光時、構井晃道ら男性10名が出演するコミカルな異色作。冒頭、二見が登場し、創立15周年の感謝を述べようとすると、 スポットで当たる照明が外され、おまけに抱えられ退場させられる。色とりどりのラフなシャツ姿の男たちがいきいきと踊るかと思うと、突然ひとりをのぞいて皆がフリーズしたり、 そこから、まろによるボールとリングを用いたジャグリングが行われたりする。ダンスのおもしろさ・カラダを使い表現することの楽しさに溢れ、それを客席で共有できる素晴らしさを満喫した。

繊細な息づかい、玄妙な味わい

唯一の旧作再演が『魚の背』(2010年初演)。田保、加賀谷香、幸内未帆、松田空、長谷川まいこが白で一部鱗のようなものをあしらった衣装に身を包み踊るさまはさながら人魚のよう。 背中はじめ上半身を細やかに用い情感に満ちた世界を織り上げる。肩や腕、それにうなじといった部位に至るまでがしなやかに扱われ、きめの細かい表現を生み出している。 二見といえば、ヨーロッパ・スタイルのクールでカッコいいダンスを追求してきたと思われているし、実際そうだろう。が、ここで立ちのぼるのは、ゆかしく繊細な息づかい。 それを「日本的」 など早計に決めつけられない。でも、そうとしかいえぬような玄妙な味わいがある。これまでにない円熟ともいえる境地を垣間みせてくれた。

総決算、そして新たな出発

わが国において“ダンスカンパニー”を標榜するものは少なくない。 しかし、ダンサーの技量秀で、主宰・振付者の意図するところを的確に掴み踊りこなす錬度高いものは、 そう多くない。二見と田保は時間をかけて後進を育み、層厚い舞踊集団を育んできた。在野の一団体がここまでのクオリティを誇るに至るには苦労絶えなかったかと思う。 近年は若手中心の作品も多く発表して意欲的だが、一線メンバーとの技量差が否めない面もあった(振付はいずれにおいても冴えわたっていたが)。が、今回の公演をみると、 若手も急激に伸び、いずれの作品とも非のつけようのない、ほとんど完璧といえる仕上がりであった。二見とカレイドスコープの総決算。同時に、これが新たなスタートとなることを確信している。

(2011年3月30日 東池袋・あうるすぽっと)

La Danse Compagnie Kaléidoscope

ダンスカンパニーカレイドスコープ 公式ホームページ
http://homepage2.nifty.com/KALEIDOSCOPE/

Dance Brick Box

ダンスブリックボックス 公式ホームページ
http://dbb.o.oo7.jp/

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