大人からのバレエ推進委員会監修

高橋森彦のバレエ&ダンスの逍遥

MRB松田敏子リラクゼーションバレエ・バレエコレクション
2011 in OSAKA「バレエスーパーガラ」〜ベテランの気迫ある演技と若手の躍進に沸いた関西バレエ夏の風物詩

クリック拡大

13年続く関西バレエ夏の風物詩

近ごろ内外で活躍する日本人バレエ・ダンサーたちが所属を超えて集い競演する機会が少なくなった。若手紹介の場として知られた「青山バレエフェスティバル」はもはや無く、各バレエ団の一線級の集結した「日本バレエフェスティバル」もしばらく開催されていない。そんななか1998年以来、大阪で毎夏大規模なガラ公演が続いている。MRB松田敏子リラクゼーションバレエ「バレエスーパーガラ」だ。大阪・中津でオープンスタジオを主宰する松田敏子のもと関西出身者を中心とする第一線の踊り手が集う。年々出演者の幅も広がり、全国的に注目される一大イベントとなった感がある。今年も魅力的な出演者が集まり、上演は全部で21曲。妙技・名演が多く、どこから振り返ればいいか迷うくらいだ。

ベテラン勢の気迫ある演技

圧巻だったのがベテラン勢の活躍。松田と公私のパートナー小嶋直也は『ラ・シルフィード』よりP(パ・ド・ドゥ)を踊った。松田は産後約5ヶ月とは思えないほど体が細くステップも軽やか。短めのロマンティック・チュチュもよく似合ってシルフ役にふさわしい。小嶋の扮する青年ジェイムズには、美の魔力に魅入られたというよりもシルフを心の底から愛してしまったという人間味を色濃く感じた。松田との交感あってこそだろう。小嶋は実力者・渡部美咲(山本禮子バレエ団)と組んで『ドン・キホーテ』よりGP(グラン・パ・ド・ドゥ)も踊った。国宝級ともいえる美麗な脚先を誇るし、踊りのキレといいパッションのこもった演技といい若手の追随を許さないものがある。小嶋と同世代で若き日から刺激を与えあってきたという盟友で、ボリショイ・バレエの名ソリストとして知られる岩田守弘の魂のこもった演技にも圧倒された。自作ソロ『ウーズニック(無罪の囚人)』では、無実の罪に問われ囚われた男の葛藤を痛切に伝える。トリを飾った『タラスブーリバ』よりゴパックでは、目を疑うくらいの高く力強い跳躍をみせて会場をドッと沸かせた。数年前に観たときよりも跳躍の高さ、キレ味が増していると感じる。総毛立つような興奮を覚えた。

充実の創作・コンテンポラリー作品

創作も充実している。芸術監督を務める漆原宏樹は『イ長調』(モーツァルト曲)『ラメント』(バッハ曲)という音楽との一体感に溢れた女性群舞を振付けたほか、楠本理江香、法村圭緒が踊った『タチアナとオネーギン』を発表した。漆原の代表作のひとつで、漆原は以前から楠本にタチアナを踊って貰いたかったという。なるほど、美しく品のある踊りに大人びた情感をただよわせる楠本にぴったりだ。若き日に恋い焦がれたオネーギンの求愛を拒絶する人妻の強さと内に秘めた想いを巧まず表現した。法村の哀れ深い演技も心に残る。法村は妹の法村珠里と組んで『ジゼル』よりPも踊った。しなやかな肢体を利し高度な技術を発揮した珠里を徹頭徹尾献身的に支える。常連の矢上恵子の新作『Mitra−3M』も刺激的だった。矢上と福岡雄大、福田圭吾という新国立劇場で活躍中の教え子とのトリオ。 ハードでブレイキンなテイストも感じさせる矢上節は今回も炸裂したが、三者が組んず解れつ絡み合っていく意想外な展開がこれまでにも増してスリリングだ。堀川美和が披露した自作ソロ『I will remember you』はひとりの女性の内面の煩悶を色濃く描いたものだった。

関西出身の若手男性の活躍

「バレエスーパーガラ」が長年果たしてきた大きな役割が、関西の若手ダンサーの紹介。ことに近年のラインアップをみると、イキのいい男性ダンサーの名が並ぶ。今年も同様である。『ダイアナとアクティオン』よりGPを福谷葉子と踊った恵谷彰は毎回このガラを盛り上げてくれる。精確無比にして爆発的なエネルギーを振りまく踊りに客席は大いに沸いた。テクニシャンであるだけでなくエレガントな魅力も備えた踊り手である。英国ロイヤル・バレエのソリスト平野亮一は若手の松本真由美と組んだ『眠れる森の美女』よりGPで、会心といっていい出来栄えの演技をみせた。端正にして優美なスタイルとテクニック、的確なサポート、いずれも文句の付けようがなく、理想的な王子を体現していた。公私のパートナー竹中優花と『コッペリア』よりGPを踊り息の合ったところをみせた武藤天華は常連。古典だけでなくオハッド・ナハリン作品はじめコンテンポラリーにもセンスをみせる。福岡生まれだが、兵庫で育ってバレエを学んだのち米・サラソタバレエのプリンシパルを務めた河島真之も登場。的場涼香とともに『サタネラ』よりGPを披露して堅実な技量をみせてくれた。

若手男性と気鋭プリマの共演

関西出身以外でも若手男性が充実している。平野と同じく英国ロイヤル・バレエのソリスト蔵健太は新国立劇場バレエ団のファースト・ソリスト長田佳世と『海賊』GPを踊る。ダイナミックに踊る長田とともに跳躍や回転等見せ場を心得た演技を見せた。東京の牧阿佐美バレヱ団のプリンシパル菊地研は久保茉莉恵とともに『白鳥の湖』より黒鳥のGPを踊った。久保は松田に師事し昨年度の「全国舞踊コンクール」第一部にて第1位を獲得、牧阿佐美バレヱ団入団後早々に今春の『ドン・キホーテ』キトリ役に抜擢された新鋭。菊地はその際もバジル役を踊って久保と共演している。大型ペアの踊りは見応え十分で、今後も楽しみにしたい。柔軟な肢体を活かし伸びやかに踊った田中ルリと組みテクニシャンぶりを発揮したKバレエカンパニーの秋元康臣も若いだけに伸びに期待したい踊り手である。

バレエに賭ける情熱の継承

前述のようにトリを飾ったのは岩田の「ゴパック」だったが、フィナーレを前にちょっとしたお遊びがあった。拍手が鳴りやまぬなか、岩田が客席にむかって耳を傾ける仕草をする。さらなる拍手をあおる。すると、もう一度「ゴパック」の曲が流れだし、アンコールとなるのかと思いきや、岩田と同じ衣装を付けた男性が次々に跳躍して現れ、皆で踊り出す。小嶋、河島、平野、菊地、秋元という面々だ。岩田を加えて6人。ゴパックならぬロクパック!?とも称された楽しい余興に会場は盛り上がった。お祭りのような楽しさに満ち、見どころ満載であるが、関西勢中心にベテランから若手までが一堂に会するこのガラは、出演者にとっても大きな刺激を受ける場であるようだ。今回は小嶋、岩田、松田たちベテランの気迫に圧倒された。日本のバレエを盛り上げ、一時代を築いてきたという自負を感じる。彼らのバレエに賭ける情熱が若い世代に受け継がれることを願ってやまない。

==
(2011年8月7日 グランキューブ大阪)
撮影:OfficeObana
==

  • 高橋森彦
  • 舞踊専門紙誌、美術誌、芸術批評誌、バレエ公演プログラム、公演チラシ、Web媒体等に公演評・解説・紹介記事・インタビュー記事を寄稿する。
  • バレエ、コンテンポラリー・ダンスなど洋舞のほか演劇等も含めたパフォーミングアーツ全般に関心。
  • 公式ブログ「ダンスの海へ」
    http://d.hatena.ne.jp/dance300

MRB松田敏子リラクゼーションバレエ
http://mrb.matsudatoshiko.net/

「バレエスーパーガラ」次回開催予定

  • 2012年7月29日(日)
  • 会場:グランキューブ大阪