渡辺真弓ようこそ劇場へ

渡辺真弓ようこそ劇場へ

No.6

『海賊』と『白鳥の湖』で新春に香しい花を咲かせた
レニングラード国立バレエ

 恒例となったレニングラード国立バレエ(ミハイロフスキー劇場)の今年の日本公演は、1月3日、東京での新春ガラで幕を開け、15日の兵庫公演まで全11公演の日程で行われました。

 今回のツァーの全幕ものは、アダン、プー二、ドリーブ他作曲の『海賊』とチャイコフスキーの名作『白鳥の湖』の2本。いずれも同劇場が伝統的に得意とする演目の新制作で、舞台全体にフレッシュな空気がみなぎっているのが強く感じられました。
 最初の演目の『海賊』(1月5日18時半東京文化会館)は、2009年に当時の芸術監督であったファルフ・ルジマトフが改訂演出を手がけたもので、どんな舞台が展開されるのか非常に注目を集めていました。しかも、メドーラに看板スターのイリーナ・ペレン、アリにマリインスキー劇場から移籍して1年になるレオニード・サラファーノフ、そしてコンラッドにルジマトフで自身という組み合わせはまさに夢のトリオ。見るたびに艶と輝きを増しているペレン、縦横無尽の踊りで絶好調のサラファーノフのアリ(ここでは奴隷ではなく、コンラッドの友人という設定ですが、王子のような雰囲気も)、そして辺りを払う風格で海賊の首領コンラッドを演じたルジマトフ。火花を散らすような白熱した共演は、見応え十分でした。
 主役と張り合うかのように、ギュリナーラのサビーナ・ヤパーロワやランケデムのアレクサンドル・オマールらも精彩に富んだ踊りで、舞台を活気づけていました。

 ルジマトフ版では、第1幕が60分、第2幕は30分と、大変スピディーな運びで、特にエピローグの扱いが簡略になっていますが、第1幕第3場の洞窟のパ・ド・トロワや、第2幕のセイード・パシャのハーレムにおける生ける花園の場面などに重点を置き、盛り沢山の踊りでロシア・バレエの醍醐味をたっぷりと味わわせてくれました。
 目の覚めるようなマリン・ブルーの海を背景にした舞台に、明るい色彩の衣装がくっきりと映え、レヴェンターリの美術の美しさにも目を奪われました。

 『白鳥の湖』(1月8日17時東京国際フォーラムA)は、長年上演されてきたボヤルチコフ版に替わって、ゴルスキー=アサフ・メッセレルによるモスクワ版を日本に紹介してくれました。再演出は、アサフ・メッセレルの甥に当たるミハイル・メッセレル。古き良き時代を偲ばせるようなスタンダードな舞台作りが特徴です。この作品では、ペレンとサラファーノフのペアが、優雅で格調高く、新時代の到来を告げるような清々しい舞台を披露してくれました。ペレンのオデットは以前より感情表現に深みを見せ、何より伸びやかなラインが絶品です。オディールでは、表情も一段とあでやかに、スケール大きな演技で魅了しました。一方、サラファーノフは、第1幕で、ゴルスキー振付のソロを悠々と踊りこなし、ダンスール・ノーブルとしての成長ぶりを伺わせてくれました。第2幕のアダージォで二人が寄り添ったところはなかなか絵になり、第3幕の黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥでは、特にサラファーノフのテクニックにまろやかさが加わり、見事な出来映えだったことをお伝えしておきましょう。
 サラファーノフに続いて、ボリショイからナターリア・オーシポワとイワン・ワシーリエフの最強ペアも加わり、これからますますその動向から目が離せないレニングラード国立バレエ団です。

写真撮影=瀬戸秀美
提供=光藍社