
中村みちえ
翻訳家
バレエ愛好家
著書「ニューヨーク ジョフリー・バレエスクール 大人からのバレエ」
第13回『もうひとつの発表会考』
出るくらいなら死んだほうがまし
バレエといえば発表会、と考える人もいればそうでない人もいます。
バレエを始めて6年、わたしはずっと後者でした。正直言って、あんなものに出るくらいなら死んだほうがまし、に近い感情を持っていました。
表舞台に出るよりも裏で舞台を支えるほうが向いているし、そちらのほうに喜びを覚えるのです。
でも今回は先生やバレエ友だちのお話を聞き、出てみることにしました。なぜ突然転向したかというと、気の迷い、としか言いようがありません。
練習が始まるまでは、新しい一歩を踏み出した高揚感もありました。でもいざ練習が始まってみると、ちっとも愉しくない、いやでいやでしようがなく、顔がこわばるばかりです。
わたしのようなタイプは珍しいんじゃないか
まず、同じスタジオとはいえ、なじみのないおおぜいの人たちと一緒になにかすること自体が試練です。 振りもよくわからない、覚えられない、なんでお金払ってまでこんな思いしなきゃならないんだと、みじめな敗北感に打ちひしがれます。 どうりであれほど体育が嫌いだったはずだよなあ、なんて今さらながらに思ったり。 周囲を見渡すかぎり、わたしのようなタイプは珍しいんじゃないかと思います。 あ、ひとりいた!バレエでなくゴルフをやっている友人ですが、彼女もコースに出るのは嫌い、うちっ放しでひとりああだこうだとぶつぶつ言いながらやるのが好き、とのこと。 おんなじだね、とおおいに共感し合ったものです。
いまは予測もつきません
練習の回を重ねるごとに、抵抗感は微妙に薄らいではきていますが、ふっとした瞬間に、なんでこんなこと楽しいんだろう、と冷めた目で練習風景を眺めてしまう自分がいます 。なぜか一緒になって熱くなることができない。発表会を機にバレエがもっと好きになるのか、熱が冷めてしまうのか、いまは予測もつきません。 でもこれがいいほうに転んだとすれば、人生最大の苦手事項を克服することになるわけで、ひょっとしてそれはすごいことかもしれないとも思うのです。 とにかく当時者として発表会をこんなふうにとらえている者もいるということで、今回は動画の紹介はお休みして、いまの心境を語ってみました。
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