「dancetoday2013ダブルビル」
インタビュー特集vol.2

関かおり

10/18(金)~20(日)、彩の国さいたま芸術劇場にて行われる「dancetoday2013ダブルビル」は国内外のダンス界の先端で活躍する若手振付家に焦点を当てた企画である。登場する2組の紹介第2弾は関かおり。繊細な感受性から紡ぐ五感に訴えかけるような奥の深い表現に注目が集まる異才だ。生い立ちからコンテンポラリー・ダンスに足を踏み入れるプロセス、作品創作の方法やクリエーション中の新作について9月中旬話を聞いた。

関かおり『ヘヴェルルッド』photo:松本和幸

関かおり『マアモント』photo:松本和幸

踊ることが好きだった少女時代~青春時代

――ダンスを始めたのはいつですか?

5歳から地元・川越にある誉田清子バレエスタジオに通い始めました。バレエは上手ではなかったですが踊ることは好きでした。音楽の授業では頭の中で踊りを考えたりしていました。友達に変な動きを作って見せていた記憶があります。高校時代はバレエには演技力も必要だと思い演劇部に入っていました。

――発表会やコンクールには出ていましたか?

発表会のほか小学校6年生のときに日本バレエ協会関東支部埼玉ブロックの公演『シンデレラ』、中学校2年生のときに『くるみ割り人形』に出演しました。スタジオの先生の振付で「バレエファンタジー」という公演にも出演しました。コンクールには出ていません。踊ることは好きでしたが外の世界はあまり知らなくて。そもそもコンクールに出るような実力もなかったです。他にはミュージカルのチャリティー公演に参加したり、プロの劇団のお手伝いに通ったり、大学のお芝居に出演したりと興味があることをどんどんやっていました。

――高校卒業後はどうされたのですか?

踊りを続けようと思いました。理学療法士など興味のある職業もありましたが、踊りをやると決めてからは、進学は考えなかったです。プロのクラスに通った方が良いと思って。バレエの専門学校や演劇の学校があるのは知っていましたが、大学に舞踊科があるということまで考えませんでした。クラシック以外にも興味があり、また、もっと外を見てみたいと思い、アルバイトをしながらいろいろなワークショップやオープンクラスに参加しました。 「バレエの本」という季刊誌の情報欄に野坂公夫先生と坂本信子先生の「ダンスワークス」のクラス情報があり、そこにあった写真にも惹かれて通い始めました。モダンダンスのお教室ですが、クラシックにも近い感じも受けました。レッスンに通い始めて2年後から作品に出演させていただきました。

――他に何か活動していましたか?

ミュージカルの舞台に出演していました。あとは地元のお教室で幼児と小学生のクラスを教えていました。誉田先生から「かおりちゃん、興味がありそうだから」とオーディションの情報をいただき、バレエ協会の公演で能美健志さんの『The Figures of Female-女性の形-』という作品を踊る機会がありました。身体から湯気が出るくらい動く作品です。その後、山田うんさんのオーディションを受けました。

コンテンポラリー・ダンスとの出会い

――山田うんさんのところに行ったのはどうしてですか?

『ハイカブリ』(2003年3月)のオーディションに応募したのがきっかけです。まだその頃はコンテンポラリー・ダンスについてあまり知らずタイトルに惹かれて応募しました。初めて出た公演が『シンデレラ』で思い出深く、プロコフィエフの曲も好きだったんです。山田うんさんはどんな方だろうという興味もありました。その後「Co.山田うん」に参加し『ワン◆ピース』に出演しました。うんさんに出会って初めてコンテンポラリー・ダンスの世界に足を踏み入れました。

――うんさんのところで身に付いたことは?

「Co.山田うん」では全てのことが新鮮でした。定例稽古で年齢の近いダンサーといろいろなことを試しました。ワークショップのアシスタントや国内外のツアーも経験しました。稽古への向かい方や舞台に立つことはどういうことかなどを学びました。作品に出演できる機会は多くなかったですが、その経験からも得るものがありました。今の自分の考え方はうんさんからの影響が大きいです。若いダンサーと付き合い始めて「ああ、自分もこう言われたな」と思うことがよくあります。

――大橋可也&ダンサーズの活動にも参加されていますね。

STスポット横浜で『あなたがここにいてほしい』(2004年1月)を観て出演したいと思いました。ミウミウさんが口に入れたおにぎりを吐き出すシーンがあり、それを観て「やりたい!」と思ったんです。 大橋さんの作品では、振りの一つひとつに意味があります。意味といっても作品に直接関係のあるものではなく、ダンサーが舞台に立つための理由というか、ダンサーはとにかくそれをリアルにやる。集中力を使います。それがとても楽しかった。大橋さんのところでは、絵や文章から形を考えることを経験しました。身体を動かして振りを作る以外の方法があるということを、大橋さんのところで知りました。

――自分の作品を作り始めたのはいつですか?

18歳です。子供のための作品作りを14年程継続して行っています。また同じ年、自分自身が踊る作品を「ダンスワークス」の先生方のお教室の発表会に参加させていただくときに作りました。その後コンクールに出るためにいくつかの作品を作りました。 コンテンポラリー・ダンスの場で初めて作品を発表したのが2003年です。「Co.山田うん」で出会った木村美那子さんとデュオ作品をやろうと話していたのがきっかけです。二人でやる前にまずは一人でちゃんと舞台に立てなければダメだと思って、ソロ作品を作りセッションハウスの「シアター21フェス」に応募しました。その後は美那ちゃんとの共作を発表していました。

――2009年に初めてグループ作品を作り始めますね?

はい。2008年と2009年にイスラエルでGAGA(バットシェバ舞踊団芸術監督オハッド・ナハリンが考案した身体訓練メソッド)のサマーインテンシブに参加し、自分の身体をどのように観察するかがクリアになりました。この頃、精神的に不安定だったのですが、イスラエルの空気とGAGAが自分には合っていたようで、帰国したらとても元気になっていました。 その直後に「ラボ20#20」(STスポット横浜主催のダンスショーケース。キュレーターがオーディション応募者の中から参加者を決める)で『ゆきちゃん』というソロ作品を作り「ラボアワード」をいただきました。初めて自分の「身体」というものに向き合って作った作品です。 「群々(ムレ)」(1980年前後生まれの同世代アーティスト集団。メンバーは岩渕貞太、関かおり、長谷川寧、原田悠、松本梓、ミウミウ)でも活動していた時期で、自分一人でも複数人の作品を作りたい、これから活動していくならば単独公演をしなければと思い始めていました。STスポットの大平(勝弘)さんに相談をして、提携公演という形で2009年10月に自身のソロ作品『めい』と振付のみのグループ作品『パラティカ』の二本立て公演を行いました。

いま明かされる!創作の方法

――どういうことを意識して作品を作っていますか?

普段の生活をしているときからいろいろな絵がイメージとして浮かんでいます。たとえば「ミキサーで身体を壊せたらいいな」とか「壁からヒトが生えていたらいいな」とか「客席に雨が降る」とか実現可能かは置いておいて、あれこれと作りたいイメージをどうやったらできるかを考えています。最近はもう少し具体的に人と人の組み方や触れ方などイメージすることも多いです。そこから、それが自分にとってどういうことなのか、何がやりたいのか紐解いてクリーションに入ります。

――出演者にイメージを具体的に伝えるのですか?

具体的に伝えるときもありますが、基本的にはまず振付だけを渡します。振りは音に合わせて作る場合もありますし、全員に同じ動きを渡したり、そのダンサーに合わせて作ることもあります。最初に「こうやるとこう見える」と、ある程度わかった状態で振り渡しすることもありますが、まずは形だけ渡して後は一度ダンサーに預けてみることが多いです。人数が多いシーンを作るときや、リハーサルが進んでくると「ここはこういう事を考えて、こういう動きにしている」「この振りは、こういうイメージでやってみて」と伝えることもあります。

――関さんの作品は、淡々とした動きが続き、一見ストイックに見えたりもしますが、無機的じゃない。情動やエロスが立ち昇ってくるようなところがあります。

ストイックとか様式美とか言われます。様式美ってどういうことなのか良くわかっていないのですが、形だけが見えてしまったり、ただのゆっくりな動きになってしまうとダメなんです。いつも感覚をフルに使って有機的な身体でありたいと思っています。動物や虫たちは無言のように見えますが、ちゃんと生きている。コミュニケーションを取っているようにも、何かを考えているようにも見える。止まっている虫を見ても死んでいるようには見えないじゃないですか?生きているものは身体から何かしらの情報を出している。そういう状態でいたいです。

――エロチックなイメージみたいなものは具体的にあるのですか?

触覚が強いというか、相手に入り込んでいきたい、溶けていきたいという思いはどこかにあります。稽古では皮膚の内側や骨と骨の隙間をいろいろなイメージを使って感じるようなこともやっています。自分が踊るときや振りを作るときは、相手に触れるときはどう触れるか、この腕のどの部分を感じるのか、同じ腕でもどの深さ(皮膚の奥か表面かなど)から触れたいのかということはかなり細かく意識しています。あとは動物の求愛や生態を調べてヒントにしているので、エロチックに見えるのかもしれません。

――関作品の特徴のひとつとして「香り」が挙げられます。「トヨタコレオグラフィーアワード2012」で「次代を担う振付家賞」を獲得した『マアモント』の初演(2010年12月)では、それが顕著でした。「香り」を使われる理由を教えていただけますか?

舞台を観るときは目と耳を使うことが多いけれど、そこに匂いがあってもいいのにと思いました。もちろん舞台作品は生で観ないと伝わらないことが沢山あるし、お客さんは目や耳以外も使って観ていると思います。けれど、とりあえずは映像で観ることもできる。匂いや味は、その場に行かないとわからない。お客さんが劇場に足を運ぶことが「体験」の一つになったら良いなと考えたのがきっかけです。
「香り」をこの先どう扱っていくか自分でもまだわかりません。言ってしまえば、なくてもいい要素かもしれません。けれど香りが入ることでお客さんの何かしらの記憶に繋がったりして、広がりを持てるかもしれない。匂いには好き嫌いもありますし、鼻を塞いでも呼吸をしたら感じてしまうし、暴力的だなとも思います。まだまだ手さぐりの段階です。
ただ、吉武利文さん[(有)香りのデザイン研究所]との付き合いを重ねるごとに新しい発見をしています。『マアモント』(2010年12月)の時は、土の匂いと動物の匂い、懐かしさに繋がる匂いを使いたいと具体的に頼みました。でも、『ヘヴェルルッド』(2012年7月)のときは作品ノートと通し稽古を観た吉武さんから、この香りが良さそうだと提示してもらいました。嗅ぐと上顎や喉の奥がペッタリとしてくる、感覚にも作用しそうなものを使いました。今回はまだ吉武さんには稽古を見ていただいていませんが、私自身どのようなものが出てくるか楽しみです。香りは奥深くてとてもおもしろいです。

――今回の新作にも出演する岩渕貞太さんは公私のパートナーです。共作した『Hetero』では横浜ダンスコレクションEX2012「若手振付家のための在日フランス大使館賞」を得ています。関さんが創作するうえでどのような存在ですか?

ダンサーとしてとても信頼しています。ただ、私の振付作品に初演メンバーとして参加してもらうのは初めてですし、リハーサルもまだまだ進行中。未知数です。今回は自分たちの共作ではありませんが、普段から身体の質や言葉などは共有している部分も多い。私の作品をずっと前から見ていてくれているので、「きっとこういうことがやりたいのだろう」と理解して取り組んでくれていると感じています。そのなかで私と彼の身体の違いも見えてきたところです。

クリエーション中の新作について

――新作についてお聞きします。発想はどこから来ているのですか?

キーワードとして「愛し(かなし)」というのがあります。愛しさと悲しさが混ざって狂おしいほどにせつない。胸が締め付けられて涙がこぼれそうになる感覚。私にとっては、家族を思ったり、弱くて純粋なものを見たとき、動植物を見たときなどです。その時々によって違います。話しながらも今泣きそうになってしまうのですが、この感覚を紐解くところからスタートしました。
自分だけではなく他にも呼吸をして生活しているものが世の中にはたくさんいる。命が繋がっていかなくなりそうなことが恐ろしい。人間の経済とか科学とかそんなことと無関係な生き物たちからおかしくなったりしている。人間も同じ生身の生き物で彼らと同じものを共有して生きているはずなのに、いつも忘れられてしまう。環境問題についての作品にしたいわけでもないし、このことばかり考えて作品を創っている訳ではありません。もっと複雑です。言葉にするのは難しい。ただ、こう感じて過ごしていることも本当なので、直接作品に反映させなくても、ちゃんと向き合って始めようと思っています。

――今回の出演者はどのようにして選んだのですか?

今回は後藤ゆうさん、矢吹唯さん(演出助手)以外は以前から知り合いではあったけれどクリエーションには初めて参加してくれる人たちです。ダンサーを選ぶ基準はいろいろあります。私が好きなのは、まずは雰囲気や個性がある人です。あとは全体のバランスを見て決めます。ただ「上手な人」だと難しい。正確に振りを踊ってもらうだけはダメだし、何も見えないからリハーサルが進まなくなってしまいます。立ったときに匂い立つものがあるというのが重要です。

――リハーサルはどのように進めていますか?

ダンサーに素材を渡して、それぞれに咀嚼してもらって少しずつ風景が立ち上がってきました。あとは私が皆に思っていることを言葉にして伝えなければと思っています。まだ決めていませんがタイトルとか今回の方向性とか。経験豊富なダンサーも多いので、アイディアを出してくれることもありますが、基本的には振付は私がしています。先ほども言いましたが、振りを一度預けて、どのように踊るかはダンサーに任せています。その人の間(ま)の取り方とか空気感、身体の細かい部分のどこを選んでどう使うかによって同じ振りでも浮き上がってくるものが違う。それが良ければそのまま膨らませて行きますし、違うと思えば、もう一度フィードバックをしてからまた任せます。その繰り返しです。

――新たに挑戦していることはありますか?

動きを考えるときに感情を優先して振りを作り始めると、たちまち回路が止まってしまいます。普段の人間の仕草のようなものもいつもは違和感があって、削ってしまうことが多い。普段の人間の行動は動ける場所が限られているし、自分も人間だから行動の意味が安易に伝わり過ぎてしまっておもしろくないです。ヒト以外の生き物として捉えた方が自分にはストンと腑に落ちるものがあります。けれど今回は、いつもよりはヒトの身体や時間を入れられそうな気がします。

――お客様に向けてのメッセージがあればお願いします。

「どう観てほしい」というのは正直言ってありません。どう受け取ってもらうかは人それぞれで良いと思います。ただ、やはり舞台はナマモノですし、特に私の作品は音や明かりを小さく使うことがよくあるので、その場にいないと伝わらない情報が多い。香りもそのひとつです。「今ここで同じ空間と時間を共有するから伝えられるもの」というのを常日頃考えています。メールではわからないけれど、ちゃんと対面して話したら、その人がどんな思いでいるかが伝わってきたとかありますよね。そんな感じです。とにかく劇場で、生で観ていただきたいです。

dancetoday2013ダブルビル」 インタビュー特集vol.1
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撮影:Toshi Hirakawa

関かおり Kaori Seki
埼玉県川越市出身。5歳よりクラシック・バレエを学ぶ。18歳よりモダンダンス、コンテンポラリー・ダンスを始めると同時に創作活動を開始、2003年より発表を始める。08年ソロ作品『ゆきちゃん』でSTスポット「ラボアワード」を受賞。12年には、岩渕貞太との『Hetero』により横浜ダンスコレクションEX2012「若手振付家のための在日フランス大使館賞」、また『マアモント』でトヨタコレオグラフィーアワード2012「次代を担う振付家賞」をダブル受賞。13年、長塚圭史作・演出『あかいくらやみ〜天狗党幻譚〜』公演に振付で参加。独特の舞踊言語と繊細な感性とをもちあわせた注目の振付家。

【公演情報】

彩の国さいたま芸術劇場 小ホール

2013 10/18(金)19:30開演 19(土)15:00開演 20(日)15:00開演

全席指定(税込) 一般4,000円 学生2,000円 メンバーズ一般3,600円


【キャスト・スタッフ】

関かおり 新作

  • [振付・演出]関かおり
  • [演出助手]矢吹 唯
  • [出演]荒 悠平 岩渕貞太 後藤ゆう 菅 彩夏 関かおり

島地保武+酒井はな ユニット〈アルトノイ〉 新作

  • [演出]島地保武 
  • [振付・出演]島地保武 酒井はな
  • [音楽]蓮沼執太
  • [衣裳]さとうみちよ(Gazaa)