MRB松田敏子リラクゼーションバレエ
「バレエスーパーガラ」
~関西発!15年目!!東西のスターによる華麗なる饗宴

関西バレエ夏の風物詩MRB松田敏子リラクゼーションバレエ「バレエスーパーガラ」は今回で15回目。関西を中心とする一線級の踊り手が揃い妙技・妙演を披露した。

クラシックではベテラン・ペアが力を発揮。主宰者の松田敏子は法村圭緒と『アレルキナーダ』よりグラン・パ・ド・ドゥを踊った。チャーミングな松田と音感豊かで軽妙な踊りをみせた圭緒の相性は良好で楽しませる。『リゼット』よりグラン・パ・ド・ドゥを踊ったのは福谷葉子&恵谷彰。テクニシャンであるうえに見せ場を心得ており危うげなところがない。『バヤデルカ』よりニキヤとソロルがストールを持ってのパ・ド・ドゥを踊ったのは竹中優花&武藤天華。難度の高いパートナーリングを手堅くこなした。

『アレルキナーダ』松田敏子&法村圭緒 photo:Office obana 尾鼻文雄

ベテランと中堅の絶妙な組み合わせが長田佳世&小嶋直也が披露した『ジゼル』よりパ・ド・ドゥ。第二幕のジゼルとアルブレヒトのパ・ド・ドゥをガラ公演のなかで演じられると、作品の暗さ・物語に入り込み難い点からして気分が盛り下がることもしばしば……。今回は、ちょっとした仕掛けがあった。パ・ド・ドゥの前に第2幕冒頭のアルブレヒトが己の不義を深く悔恨しジゼルの墓へとやってくる場面を入れる。小嶋は心のこもった演技をみせマントさばきもサマになっている。そこから絶妙に音楽をつなげてパ・ド・ドゥへ(編集が物凄く上手い!)。長田の繊細な脚さばきと流れるように美しいラインには息をのんだ。今秋から新国立劇場バレエ団のプリンシパルに昇進。関西が産んだ名プリマになりつつある。

『ジゼル』長田佳世&小嶋直也 photo:Office obana 尾鼻文雄

新国立劇場バレエ団といえば、長田と同時にプリンシパル昇格を果たした米沢唯が厚地康雄と組み『ドン・キホーテ』よりグラン・パ・ド・ドゥを踊った。テクニックとフィジカルの強さを押しだすだけでなく艶やかさも加わって魅力的なキトリを造形。この人、東京の様々な公演会場で見かける。向上心強く勉強家のようだ。おっとりした若手プリマの多いバレエ界でパワフルな踊りと前向きの意志のある演技は貴重。飛躍を楽しみにしよう。

『ドン・キホーテ』米沢唯&厚地康雄 photo:Office obana 尾鼻文雄

飛躍中のプリマといえば法村珠里だ。容姿・スタイルに恵まれているのはもちろん優れた舞踊センスと役を生き抜く表現力、それに舞台度胸の強さが非凡である。今回は『白鳥の湖』より黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥを河島真之と踊った。河島を誘う視線や仕草の一つひとつが、なんとも色っぽい。美しく愛らしいなかに秘めた男を翻弄する底知れぬ恐ろしさにドキッ!高々と脚を上げ、フェッテも32回きっちり踊り切るが、技術の誇示に終わらずドラマを感じさせ秀逸だ。10月、法村友井バレエ団公演にて全幕に挑戦し大成功を収めたが、「バレエスーパーガラ」の舞台によって大いに自信をつけたことも大きかったのではあるまいか。「若手のホープ」からバレエ界を背負う金看板になりつつある。

『白鳥の湖』法村珠里&河島真之 photo:Office obana 尾鼻文雄

若手も活躍。『ダイアナとアクティオン』よりグラン・パ・ド・ドゥを踊ったのはウクライナのオデッサで踊る寺田翠&大川航矢。7月、東京・新国立劇場で行われた「バレエ・アステラス☆2013」でも話題をさらったが、大川の驚異的に高いジャンプは圧倒的。寺田もテクニシャンで超絶技巧を美しくみせ拍手喝采だった。中村春奈&池本祥真の『海賊』グラン・パ・ド・ドゥも「攻め」の踊り。ともに熊川哲也Kバレエカンパニーのソリストだ。つねに身体を鍛錬しプロフェッショナルな意識を保っている人ならではの切れを感じた。また、各コンクール上位入賞を誇る山内未宇が『エスメラルダ』よりヴァリエーションを踊った。関西の若手を紹介したいという当初からのテーマもしっかりと受け継いでいる。

『ダイアナとアクティオン』寺田翠&大川航矢 photo:Office obana 尾鼻文雄

創作・現代作品も充実していた。堤本麻起子・西尾睦生・河島真之の踊った『ピラニア』は法村友井バレエ団の重鎮・井上恵美子の振付作品。「女性二人が一人の男を追い詰め喰ってしまう」というもの。初演は1955年、今から58年前だ。「女性の抱く本能的な強さ」が感じられ普遍的な主題を扱う。音楽や衣裳など含め改訂を行い、時代を超えて受け継がれてきた。聞くところによると、「喰われてしまう男」を最初に演じたのが貞松融。神戸の貞松・浜田バレエ団団長である。いまでは好々爺の彼が井上と踊り(最初はデュオだったようだ)喰われてしまったわけだ。味わい深い再演だったが10月5日、井上が天に召された。バレエ団ならびにOBの精神的支柱であった。『ピラニア』上演には本番まで付きあい元気なところをみせていたという。最後の仕事となってしまったけれども忘れ難い舞台になった。謹んでご冥福をお祈りする。

『ピラニア』堤本麻起子・西尾睦生・河島真之 photo:Office obana 尾鼻文雄

法村友井バレエ団出身で井上の指導も受けていたのがMRB講師でもある玄玲奈。欧州で活躍し、オーストリアのグラーツ・オペラ劇場ではアシスタント・ディレクターまで務めあげた。今回発表した2作とも本場仕込みのセンスよく完成度高い現代作品だった。自身が法村圭緒と踊った『ロメオ&ジュリエッタ』はバルコニーの場の踊り。シンプルな衣裳に身を包んだ二人が微妙繊細に絡み合いながら感情の機微を交わしあう。渡部美咲、田中ルリ、法村珠里、福谷葉子、竹中優花、的場涼香が踊った『MUR』はベテランから若手まで花も実もある実力者6人の関係からヒリヒリするような緊張感が立ちあがった。玄の振付技術と経験は、わが国で活躍する海外帰国者たちのなかでも上位にあると考えられる。オペラの仕事にも携わってきており、大きなプロジェクトでも才能を発揮できそうだ。

このガラおなじみ関西が誇る大物・矢上恵子は自身と福岡雄大、福田圭吾とのトリオ『Mitra─3M』を踊る。再演だが、彼らの半端ないパワフルな動きの連続にただただ圧倒される。福岡、福田はともに新国立劇場バレエ団の男性の要となっているが、地元で踊る矢上作品でのキレキレのダンスには格別なものがある。炸裂する矢上節をおおいに堪能できた。

『ロメオ&ジュリエッタ』玄玲奈&法村圭緒 photo:Office obana 尾鼻文雄

『MUR』 photo:Office obana 尾鼻文雄

みどころだらけの舞台であるし甲乙つけ難い。とはいえ15回目という節目に際し芸術監督であり、主宰者・松田の師である漆原の存在の大きさをあらためて実感した。『ワルツ』(ヨハン・シュトラウス)は22人の女性がワルツにのせて軽やかに舞う。『トッカータとフーガ』はラフマニノフ曲。15人の女性が華やかに踊った。漆原の作品はどれも音楽と動きが分かちがたく結びついており観ていて心地よい。そして深いドラマ性に惹かれる。楠本理江香に振り付けたソロ『終章—ビオレッタ』はその最たるもの。オペラはもとよりバレエでも多くの作品がある「椿姫」の幕切れ、肺病を病み愛する人を思いながら一人死にゆくビオレッタを描く。消え入りそうな生命の火をかろうじて灯しながら生きている――切なる思いを身体の底から雄弁に物語る。強いまなざしと磁力ある存在感。巨匠の円熟の手腕と楠本の成熟した表現力が噛み合って日が経っても色あせない好舞台となった。

『ワルツ』 photo:Office obana 尾鼻文雄

『トッカータとフーガ』 photo:Office obana 尾鼻文雄

壮大な規模のガラを毎年続けるのはさまざまな面で困難であろう。マンネリに陥らないかという心配もあるかもしれない。しかし、近年は出演者の顔ぶれも広がり、一層魅力的になってきている。創作にも独自の成果を挙げており要注目だ。2014年度も8月3日(日)に開催が決まっている。バレエの華やかさと深さを満喫させる、まさにスーパーなガラに乾杯!
(8月4日 グランキューブ大阪)

写真撮影:Office obana:尾鼻文雄