菊地研&日髙有梨(牧阿佐美バレヱ団)
インタビュー
~名門の新時代を切り開く気鋭が語る“いま”

日本バレエ界を代表する名門・牧阿佐美バレヱ団に勢いがある。新世代が台頭し若いエネルギーに満ちている。菊地研と日髙有梨はその代表格だ。6月14日(土)の『ドン・キホーテ』に主演する2人に今までの軌跡やバレエ団の現在、舞台への意欲を語ってもらった。

菊地研 KIKUCHI Ken

日髙有梨 HIDAKA Yuuri

菊地研 KIKUCHI Ken
石井清子バレエ研究所、竹内ひとみバレエスクールで学び、2001年、牧阿佐美バレヱ団に入団。同年、「デューク・エリントン・バレエ」初演でソリストを踊り一躍注目を集める。2003年「くるみ割り人形」で主役デビュー。「ドン・キホーテ」「リーズの結婚」「ラ・シルフィード」「白鳥の湖」「ノートルダム・ド・パリ」、新国立劇場バレエ団「椿姫」等に主演、「ノートルダム・ド・パリ」のフロロ、「眠れる森の美女」のカラボス等を巧みに演じる。ボリショイ・バレエ学校短期留学を経て、2002年こうべ全国洋舞コンクール男性ジュニアの部第1位受賞。2006年舞踊批評家協会賞・新人賞受賞。


日髙有梨HIDAKA Yuuri
押領司博子バレエクラス、橘バレヱ学校、AMステューデンツで学ぶ。2003年、牧阿佐美バレヱ団に入団。2010年「くるみ割り人形」で主役デビュー。2011年「白鳥の湖」、2012年「ロメオとジュリエット」に主演する他、「くるみ割り人形」の雪の女王、「ラ・シルフィード」のエフィ、「眠れる森の美女」の妖精(魅惑の庭の精、水晶の泉の精)、白猫、「白鳥の湖」の各国の姫、「ドン・キホーテ」のキトリの友人、「三銃士」のミレディ等を踊る。



入団まで

――バレエ団に入るまでの経緯をお聞かせください。

菊地:姉の付き添いで石井清子先生のスタジオに出入りしていた10歳の頃、石井先生に勧められて始めました。2年後に福島の母方の実家に引っ越すことになり、竹内ひとみバレエスクールに入り佐藤茂樹先生に学びました。2001年、高校1年生の時にスカラシップを得てモスクワ留学が決まりバレエで生きる決心をしました。親を説得して高校を中退しました。留学までの3、4か月間東京で牧のクラスを受けました。茂樹先生がOBだったからです。振付にいらしていたローラン・プティさんから『デューク・エリントン・バレエ』に抜擢いただきました。その後留学から戻り牧に入って現在に至ります。

日髙:小さいころからとても身近にバレエがあったので、気が付いたら始めていました。小学生の時、沢田加代子先生に橘バレヱ学校進学を勧められました。入ってみると周りのレベルがあまりにも違う。根が負けず嫌いなので、そこからバレエにのめりこんでいきました。牧阿佐美バレヱ団の公演を小さな頃から観ており習っていた先生も牧の団員だったので憧れて入団しました。

「くるみ割り人形」日髙有梨、菊地研 2013年(撮影:鹿摩隆司)

「白鳥の湖」菊地研 2011年(撮影:鹿摩隆司)

バレエ団入団後

――菊地さんの16歳でのデビューは鮮烈でした。輝いていた。時分の花という言葉があるけれども特別な輝き。もちろん、その後も輝きご活躍ですが(笑)。

菊地:20代前半まではフワフワしていた(笑)。たくさん舞台には出ていましたが余り記憶にないくらい。虚勢ばかり張っていましたね。しっくりし出したのはここ数年です。

――日髙さんがバレエ団公演に初めて出たのは?

日髙:入団した2003年秋の『眠れる森の美女』です。入団後しばらくは全然舞台に出られずアンダー・キャストにも入らなくて……。2年後『くるみ割り人形』で花のワルツに入れていただきましたが、その後はずっとコール・ド・バレエでした。1人でソロを踊ったのは2009年の『くるみ割り人形』雪の女王が初めて。よくチャンスを下さったと思います。


――菊地さんが2005年の『ドン・キホーテ』で初めて踊ったバジルが印象的でした。カッコよく色気があって一皮むけた感がありました。でも、その後怪我もしましたね……。

菊地:怪我したのは2009年2月の『リーズの結婚』の前でした。疲労骨折が悪化し階段を下りるだけで折れるかもしれないくらいの重症でした。半年は休養しろと言われたのですが3ヶ月くらいで復帰し『ジゼル』のヒラリオンを踊りました。でも全然戻っていなかったですね。地に足がついていない。結局2年くらいは違和感ありました。


――日髙さんはバレエ団に入ってから辛いことはありましたか?

日髙:舞台に出られないのは辛かったです。でも下積み時代があったから今がある。幸い大きなけがも病気もしたことがないので、そういう意味での辛さはないかもしれません。

菊地:イレギュラーなことがないのは良いと思う(笑)。

――菊地さんみたいに凹凸あるのと、どちらがいいのか(笑)。

日髙:何があっても常に全力で行く!ですね。

――1本道に?

日髙:行けているのか分かりませんが……。根が心配性なので気を抜くと必ず舞台に出てしまうという恐怖心があります。だから、その日できることは必ずちゃんとやる。コツコツと。そのおかげでチャンスをいただけたと思っています。今後も続けたいですね。

菊地研「三銃士」2014年 ダルタニアン(撮影:山廣康夫)

「ロメオとジュリエット」2012年日髙有梨(ジュリエット)(撮影:鹿摩隆司)

誇れる伝統を受け継ぎ、発展させていきたい

――日髙さんは小さな頃からバレエ団の舞台をご覧になっていて、子役・学生時代から公演に参加されています。牧の舞台で育ってきたといってもいいですね。

日髙:リハーサルでも振りを覚えるのは早いです。舞台を観るのも好きですね。今は自分も出ているのでバレエ団の公演は観られませんが気になる舞台は観に行きます。

――牧の舞台をよく知っている。昨年(2013年)の『白鳥の湖』では主役ではありませんでしたが、それぞれの幕できっちり役目を果たし舞台を引き締めていました。舞台全体をよく知って踊っている人と、そうでない人は違う。普段公演を観ていても感じます。

菊地:自分がどこにいるかを分かっているだけでも全然違う。『白鳥の湖』だとチャルダッシュや式典長以外は大体の役をやっています。王子を踊る際にもどういう風に観られているとか皆の配置も分かっているから動きやすくなる。


――王道をゆく古典のレパートリーがあって定期的に再演しているのは牧の強みですね。

菊地:今の子たちはそれをもっと意識してほしい。自分以外のパートがすべて頭に入るくらいの感覚でリハーサルをこなしていると本番で全部が見える。やることもいっぱい頭の中に出て来るので舞台を作るのがより面白くなってくる。

――そうそうたる先輩方のいらした時代に学べたのが大きいのでは?

菊地:逆に埋もれちゃうから個性を出さなきゃいけないと思ったんです。スーパーダンサーばかりだったので。プティ作品のときでもソリストとして入ると押さなくちゃ!と。


――牧の良さ・誇れるところは何ですか?

日髙:歴史があり色々なことを経験している先輩方がいらっしゃるし、OB・OGの先生方が教えてくださる。皆がファミリー。ひとつの作品・舞台をバレエ団のものとして育て作っていける。スタッフの方も大体毎回同じ。総合芸術としてお客様にお届けできる。

菊地:同感。その良さを生かしつつ新しいものにも挑み進化させていきたい。

「白鳥の湖」日髙有梨、菊地研 2011年 第2幕(撮影:鹿摩隆司)

初共演、信頼感に満ちた『白鳥の湖』

――日髙さんのターニング・ポイントは?

日髙:『白鳥の湖』主役デビュー(2011年)ですね。総監督の三谷恭三先生に直接ご指導いただきました。コール・ド・バレエ時代が長かったので主役・ソリストとしての在り方が分からなかったのですが、自分の中で足りないこと・やらなければいけないことが見えてきました。王子役の菊地君にも助けてもらいました。


――同世代ですが主役経験という点では菊地さんが先輩です。

日髙:大先輩!負けない存在感を出すのに必死ですけれど安心して身を任せられる。コーダの最後の方とか盛り上げなければならないところでも上手なので、こっちもやりたいようにできる。頼りにしています。

菊地:今思うと昔、パートナーに不安を残したまま舞台に上がらせていたと思う。何があっても「絶対に大丈夫!」って言える状態にいたい。「大丈夫、大丈夫」ってよく言っているので軽く思われがちなのですが本当にそう思っているんですよ!

日髙:パートナーですけれども支えてくれるのは男性。男性のサポートがあるからこそ女性はより美しく華やかに魅せられる。相乗効果で舞台はできている。どちらかが欠けても駄目だと思う。

菊地:バレエで一番際立たせなければならないのは女性。そこは大事ですね。


――『白鳥の湖』のオデット/オディールは技術面においても表現面においても難しい。でも初役なのに落ち着いて自信を持って役に入りこんでいる印象でした。

菊地:リハーサルって、そうあるべきだと思う。頭を使わなくて身体が動けるようにしなくちゃいけない。1か月くらい前から自分たちのパートを全部通していました。

――日髙さんは堂々としていたし菊地さんとのパートナーリングも良好でした。

菊地:彼女は男性に組まれるのが上手。思い切りがよくて、お互いを探らなくていい。パートナーシップは信頼です。良い時は目線が違う。合う瞬間がちゃんと見えている。

「白鳥の湖」日髙有梨、菊地研 2011年 第3幕(撮影:鹿摩隆司)

全力を出し尽くしたい!『ドン・キホーテ』への抱負

――『くるみ割り人形』(2013年)を経て今回も共演します。リハーサルはいかがですか?

日髙:未知ですが楽しい。一幕なんかは演技を含めての踊りなので、バジルとの駆け引きや周りの人との演技で上手にタイミングを合わせなければならない。キトリとドルシネア姫との差もなければいけない。そういうことを電車に乗っているときでも考えています(笑)。

菊地:バジルを(バレエ団公演で)踊るのは4回目。思い入れは強いです。より自然に演技できたらなと。ラフすぎず自然にやりたい。何の役でもそうかもしれませんが目標です。


――バジル役をどう捉えていますか?

菊地:舞台に出てきた瞬間に周りが明るくなるようなインパクトがほしい。皆の気持ちをドーンと持っていくような。風が吹くようなイメージを持ってやっています。音楽と雰囲気に混ざっていくような感覚を考えて踊ると明るさが出てきます。そうすると、こちらの表現したものを観てくださる方が拾ってくださると思う。


――2人だからできることは?

菊地:彼女はキトリに向いている。勝気そうなところが(笑)。

日髙:(苦笑)。

菊地:キトリがバジルを尻に敷くくらいの感じがいい。バジルばかりが前面に出てくることがあるじゃないですか?キトリが勝気で「しょうがないな……」みたいな方が、より良くなる。そういうのをやってくれそうだから、こっちも(気持ちを)出しても大丈夫そう。

日髙:私は皆に「張り切りすぎないでね!」と言われるように(気持ちを)出したがるタイプ。菊地君はそれをやっても合せてくれるし、もっと(気持ちを)出してくれると思う。


――最後に抱負を。

菊地:全てを出し尽くしたいですね。やってやるぞ!って。

日髙:全力を出し切るしかないですね。前回(2011年)から周りのキャストもガラっと変わっているので、新しい牧の作品という印象が生まれると思います。その幕開けの主役に選んでいただいたのですから、それにふさわしく踊りたいですね!

菊地:今の最高のものをお見せするのが舞台人の役目。そこを目指します。

菊地研「ドン・キホーテ」2011年(撮影:鹿摩隆司)

日髙有梨「三銃士」2014年 ミレディ(撮影:鹿摩隆司)

【公演情報】

牧阿佐美バレヱ団『ドン・キホーテ』全幕

  • 【日時】2014年6月14日(土)16:00(日髙有梨&菊地研)
  •          15日(日)15:00 (青山季可&清瀧千晴)
  • 【会場】ゆうぽうとホール(五反田)
  • 【指揮】 アレクセイ・バクラン
  • 【演奏】 東京ニューシティ管弦楽団
  • 【料金】(税込・全席指定)
  •       S席:10,800円
  •       A席:8,600円
  •       B席:6,400円
  •       C席:4,300円
  •       A席ペア(2枚セット):15,000円
  • 【お問い合わせ】
  • 牧阿佐美バレヱ団公演事務局
  • Tel:0570-03-2222
  • Fax:03-3360-8253
  • 受付時間10:00~18:00〔土・日・祝を除く〕
  • http://www.ambt.jp/