MRB松田敏子リラクゼーションバレエ「バレエスーパーガラ2014」~今年も多彩な演目・出演者で盛り上がった関西バレエ夏の風物詩

毎夏大阪で行われる「バレエスーパーガラ」はMRBを主宰する松田敏子が1999年から始めたガラ公演だ。今年で16回目となる。2部構成で20曲と例年同様ボリュームたっぷりだけれども創作も織り交ぜて工夫があり飽きさせない。興味深い演目を中心に報告したい。
(2014年8月2日 グランキューブ大阪) 撮影:尾鼻文雄

『ライモンダ』より 松田敏子&小嶋直也 (C)尾鼻文雄

第1部最初の高橋陽子(デンマーク・ペーター・シャフス・バレエ)と恵谷彰の『ラ・シルフィード』が良い仕上がりだった。高橋の軽やかでロマンティックな雰囲気と恵谷のエレガントな佇まいが「絵」になる。松田敏子と小嶋直也の『ライモンダ』よりグラン・パ・ド・ドゥも味わい深い。華奢で安定感のある踊りの松田とラインが抜群に美しく踊りにキレのある小嶋は息が合って見応えがあった。楠本理江香と法村圭緒がアンサンブルを従えバッハの曲で踊る『キケロ』(振付:漆原宏樹)では、このガラでおなじみとなったパートナーシップの妙が発揮された。音楽との一体化が心地よい。竹中優花と武藤天華は『白鳥の湖』より黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥを披露。こちらもパートナーリングの良さを見せた。平林万里と河島真之の『海賊』よりグラン・パ・ド・ドゥ、福谷葉子と西岡憲吾の『タリスマン』よりグラン・パ・ド・ドゥはベテランと若手の組み合わせが新鮮だ。

『ジュリエットひとり』渡部美咲 (C)尾鼻文雄

『白鳥の湖』黒鳥のパ・ド・ドゥ 竹中優花&武藤天華 (C)尾鼻文雄

異色作・変化球もあった。渡部美咲のソロ『ジュリエットひとり』はベルリオーズ曲に漆原が振り付け。タイトル通り1人でジュリエットのドラマを踊り演じ切る。芸術監督でもある漆原の若々しい感性と、その要求に応えた渡部の力演が圧倒的だった。玄玲奈と堤悠輔の『Un:Couple』(振付は玄)は、2人と犬(ぬいぐるみ)が奇妙に絡む遊び心あふれる快作だ。コンテンポラリーと言えば苫野美亜と横関雄一郎の踊った中村恩恵の『兵士の物語』より兵士と王女のデュエット。中村と首藤康之の踊った名場面が新たに蘇った。

『キケロ』楠本理江香&法村圭緒 (C)尾鼻文雄

第2部では盛り上がる作品が続く。『LOOK』は小嶋がシューベルトに振り付けた作品で、女性12人、男性6人の出演者皆がプリンシパル、ソリストクラス。彼らが小気味よく踊り継ぎ観ていて爽快な気分に。寺田翠と大川航矢の『アレルキナーダ』グラン・パ・ド・ドゥにはブラボーの嵐。大川の宙を浮くような高い跳躍は滅多にお目にかかれない。寺田も超絶技巧を優美かつパワフルにこなす。若々しく技量十分で圧倒的な出来栄えだった。

『LOOK』(C)尾鼻文雄

トリの永橋あゆみと中家正博の『ドン・キホーテ』グラン・パ・ド・ドゥも手応えあった。東京の老舗・谷桃子バレエ団のプリマ永橋が関西で踊る機会は珍しい。ドレスデンでの1年間の在外研修を経てフィジカルが強くなり、踊りが大きくしなやかになった。偉丈夫の気鋭・中家も牧阿佐美バレヱ団で小嶋のしごきに喰らいつきスケールの大きな踊り手になりつつある。今後も楽しみだ。2人の快活で明るい「魅せる演技」に客席は沸いた。いっぽうで野間景と武藤天華の『ロミオとジュリエット』よりバルコニーのパ・ド・ドゥ(振付:野間康子)、田中ルリの『瀕死の白鳥』といったドラマ性の濃い演技もあった。

『アレルキナーダ』グラン・パ・ド・ドゥ 寺田翠&大川航矢 (C)尾鼻文雄

初登場の若い才能にも注目したい。熊川哲也率いるKバレエカンパニーから今年は湊まり恵と井澤諒が出演し『コッペリア』よりグラン・パ・ド・ドゥを爽やかに踊った。ともに団のソリストであり将来が嘱望される。若い才能といえば、関西の有望な若いダンサーたちもヴァリエーションを踊ったり、漆原の『キケロ』に出ていた。なかでもMRB所属の松浦梨歩は今年の「こうべ全国洋舞コンクール」クラシックバレエ部門女性シニア第1位に輝いている。彼女のような伸び盛りの踊り手にとって一層の飛躍の場だ。一流の舞台を踏み、一流ダンサーと接することによって若い才能は育つ。「バレエスーパーガラ」は、水準の高さ、内容の幅広さに加え、未来のバレエの萌芽も感じられる。末永く続いてほしい。

『ドン・キホーテ』グラン・パ・ド・ドゥ 永橋あゆみ&中家正博 (C)尾鼻文雄