フェスティバル/トーキョー14~気鋭アーティストが集う舞台芸術の祭典、ダンスプログラムを中心に

「フェスティバル/トーキョー14」が2014年11月1日~30日に行われた。「国際的な舞台芸術フェスティバルとして、国境、世代、ジャンルを超えて多様な価値が出会い、互いを刺激しあうことで新たな可能性を拓く場となることを目指します」(公式HP)としている。今回のコンセプトは「境界線上で、あそぶ」。主催公演では、演劇、ダンス、美術、音楽など各分野の気鋭がコラボレーションを試みた。ダンスプログラムを中心に振り返りたい。

「春の祭典」撮影:片岡陽太

なかでも『春の祭典』(11月12日~16日 東京芸術劇場プレイハウス)は話題を集めた。白神ももこ(演出・振付)× 毛利悠子(美術)× 宮内康乃(音楽)による協同作業である。1913年にストラヴィンスキーが作曲しニジンスキーが振付けた『春の祭典』は、現代ダンスに革命をもたらした舞台として語り草だ。難曲に挑んだ白神らのアプローチとは?
ステージは、なだらかな傾斜状。4本の街路灯が立っている。パフォーマーたちは、客席後方から意味不明な声を発したりしながら現われる。衣裳はキッチュだ。第1部「大地礼賛」では奇妙な祝祭感が立ち昇る。村歌舞伎「モモタロウ」なる滑稽味のある出し物も演じられる。ニジンスキー版の舞台はロシアの寒村だが、ここは(多分)日本のどこか。無機的で、がらんとした空間である。第2部「いけにえ」では秘儀的な光景を展開する。若者たち醸し出す、空騒ぎかもしれぬが不思議な高揚感が印象に残った。

「桜の園」撮影:片岡陽太

ニブロールにおいて振付家として活躍する傍ら演劇ユニット、ミクニヤナイハラプロジェクトを主宰する矢内原美邦。彼女の新作『桜の園』(11月13日~17日 にしすがも創造舎)も注目された。チェーホフの同名の名作――没落するロシアの名家を描く家族劇――に想を得て、伐採されんとする老木に関する3つ立場からの物語に読み替えた。土地を開発する業者、保護を訴える者、土地の持ち主。にしすがも創造舎校庭の3箇所で物語が錯綜する。そして、一段落すると、観客は講堂内の客席に導かれ続きが展開されていく。
チェーホフは下敷きで、老木の話もメタファーなのは明らかだ。民族、宗教、政治等などをめぐって対立と混乱の絶えない現代の縮図とも言えるだろう。現状を安易に肯定も否定もせず状況を示し対話の道を探る。矢内原らしい真摯で誠実な取り組みだった。

「動物紳士」撮影:青木司

『動物紳士』(11月14日~24日シアターグリーン BOX in BOX THEATER) という森川弘和(振付・出演)× 杉山至(美術・衣裳デザイン)のコラボレーションも興味深かった。森川はマイム、サーカスを経て本格的にダンスの世界に入った異色の存在。杉山は注目劇団の舞台美術の数々を手がけている実力者だ。森川は、伸縮性のある素材の衣裳を着て、人間なのか動物なのか分からぬような得体の知れない動きをしたり、椅子やオブジェと絡んで変幻自在である。ダンスと美術の「境界線上で、あそぶ」舞台として楽しんだ。

「1分の中の10年」撮影:松本和幸

今年から始まった「アジアシリーズ」では、韓国の多元(ダウォン)芸術を特集した。『1分の中の10年』(11月13日~16日 東京芸術劇場 シアターウエスト)は、韓国の伝統舞踊とコンテンポラリーダンス素養のあるイム・ジエが構成・振付をてがけ、捩子ぴじん、ルーマニア出身のセルジウ・マティスと組んだコラボレーションである。全体は3部構成で、デュオ、トリオが繰り広げられる。それぞれの学び培ってきた身体言語の相違を浮き彫りにしつつ新たなダンスを生み出していく試み。コンセプチャルな舞台だった。

「驚愕の谷」撮影:松本和幸

オープニングを飾るピーター・ブルック『驚愕の谷』(11月3日~6日 東京芸術劇場プレイハウス)も観ることができた。演劇界をリードしてきた巨匠の最新作だ。超記憶能力や共感覚を扱った刺激的で隙のないステージングはさすが。蜷川幸雄や野田秀樹らにも多大な影響を与えた前衛の先駆者を開幕に配したことで重みが出たように思う。ブルックのような革命家がキャリアを重ねて成熟した表現を見せ、日本の気鋭や若手が、ぐんぐん前に進む――。舞台芸術の豊かな魅力と可能性を再確認できた。