二見一幸(ダンスカンパニーカレイドスコープ)インタビュー
~創作・育成に精力的に取り組むダンス界のニューリーダーが語る過去・現在・未来~

1996年に創設されたダンスカンパニーカレイドスコープ率いる二見一幸は、多彩な動きを駆使した緩急自在な振付を持ち味に質の高い秀作を連打してきた。後進の育成にも取り組み文化庁在外研修員や舞踊コンクール&創作コンクールの上位受賞者を輩出している。2014年春には、現代舞踊界最高の栄誉と目される江口隆哉賞を受賞し、一層大きな存在感を示すようになってきた。これまでの歩みと現在、今後の展望・抱負を語ってもらった。

二見一幸 Kazuyuki Futami
La Danse Compagnie Kaleidoscope/Dance Brick Box主宰
青山ダンシングスクエア/G-Screw Dance Labo/東京都立総合芸術高等学校市民講師

振付家を目指し舞踊家故庄司裕氏に師事。後にコンクールにて数々の受賞に輝く。 埼玉国際創作コンクール大賞、こうべ全国洋舞コンクール1位、全国舞踊コンクール創作1位東京新聞大賞。
文化庁在外研修員として2年フランス研修。帰国してダンスカンパニーカレイドスコープを96年に設立。 以来クリエイティヴコンセプトを深化させ作品を毎年発表。芸術祭優秀賞の評価を得る。ベストダンサー賞、 音楽新聞村松賞。大阪芸術大学、日本バレエ協会、日本女子体育連盟等ワークショップ及び作品振付。 マシュー・ボーン カンパニー来日時にはレッスン講師に指名される。各舞踊コンクール審査に加わる。 後進の育成にも情熱を注ぎ、最優秀指導者賞。石井獏・はるみ指導者賞。チャコット奨励賞。江口隆哉賞。 大和市にDance Brick Boxを設立し、独自の企画公演やスタジオパフォーマンスを展開。

――ダンスを始めた頃のお話をお聞かせください。

児童劇団に入っていてダンスをやったほうがいいと勧められました。厚木のモダンバレエスタジオに通いました。そこに庄司裕先生が教えに来られ、誘われてクラスを受けました。クラスの後のリハーサルで木佐貫邦子さんたちが踊り、作品を創っている現場を観て凄いなと。庄司先生に「振付家になるにはどうしたらいいのですか?」とお聞きしました。先生は「とりあえず踊りなさいよ」とおっしゃいました。それでモダンバレエスタジオに通いながら庄司先生に学び、モダンダンスのコンクールに出るようになりました。

――ダンス以外に習い事や部活動をされていましたか?

運動は好きじゃないし得意ではなかったですが、中学生の時、ダンスの先生に隠れて部活動でサッカーをやっていました。先生は「足の形が変わらないのだけど、おかしいわね」と(笑)。ダンスに夢中になり児童劇団は1年くらいで辞めました。

――ジュニア時代のことを教えてください。

中学2年生の時、庄司先生がコンクール用の作品を創ってくださいました。当時、男の子は少なかったですね。東京新聞の全国舞踊コンクール、埼玉全国舞踊コンクールに出ていました。ジュニアの時は予選を通るくらいでしたが、20歳になりシニアの部門で出るようになると、24、25歳くらいになって入選するようになりました。

「闇から闇に伝えられていく」撮影:塚田洋一

――庄司先生のご指導はどのようなものでしたか?

最初はバーレッスンをしますが、そのあと1時間半くらい振付を踊ります。先生が即興で動き、それを皆がコピーして覚えていく。ハードですが振りを覚えるのが速くなりました。

――庄司作品の印象は?

動きは即興を基に創っていますが人の動かし方が上手い。「わが鳥よ安らかに眠れ」という女性群舞が好きでした。構成がどんどん変わっていって面白かった。

――庄司先生のもとで創作を始められたのですよね?

コンクール用のソロを作ったのが最初です。自分ではしっくりしないところを先生に指摘される。「こうしたほうがいいんじゃないの?」と。その導き方が自分には合っていました。

――公私のパートナーである田保知里さんと組み始めたのもこの頃ですね?

元々同じモダンバレエスタジオにいて一緒に庄司先生の所に移籍しました。全国舞踊コンクール創作部門に出した最初の作品は田保とのデュエット『闇に咲く言葉』(1990年)。「エレジー」というポピュラーなクラシックの曲を用いて、定番ですけれども長い布みたいなのを使いました。それを敷いたり引っ張ったり……。3位に入りました。8人くらいの群舞で出たこともあります。26歳まで4年間連続で出し最後に1位をいただきました。

「キネスフィアテクスト」撮影:塚田洋一

「CHAIN EFFECT」二見一幸  撮影:塚田洋一

――1993年に文化庁芸術家在外研修員に選ばれ2年間パリに留学します。

当時ヌーヴェルダンスのレスキスやアンジュラン・プレルジョカージュが来日しました。ピナ・バウシュも来ました。作品もアプローチも圧倒的でした。動き方やテクニックを吸収したいし舞台を観たかった。庄司先生は僕が26歳で在研に行きたいと言うと「まだ早い!」とおっしゃられました。でも世界的には26歳で振付家になろうというのは遅い。昔から自分のカンパニーを作りたいと思っていました。同じ感覚で付き合えるメンバーと作品を創りたかった。そのためには自分でダンサーを指導・育成しなければならない。訓練法も勉強したかった。結局、先生には反対を押し切る形で推薦状を書いていただきました。

――研修の地にパリを選んだのは?

民音(民主音楽協会)の振付コンクールがあり、レスキス出身のル・アーヴルで活動しているフィリップ・トゥレーの作品を観てフランスに行こうと。ダンス雑誌で知ったパリのスタジオに手紙を書いて受け入れ承諾を得ました。でも、行ってみると、2週間で先生が代ってしまう。良いと思ったクラスが無くなり、太極拳しかなくなったりしたので辞めました。代わりにペーター・ゴスが受け入れてくれ、文化庁にも事情が異なってしまったことを説明し了承を得ました。

――パリでは、どのように活動していましたか?

田保も1年採択の在研で同時に来ました。バレエやジャズダンスのクラスを受けたりワークショップに出たりしました。作品を創って見せたいと思い劇場主催のプログラムに入れてもらったりしましたが、「日本人なのだから舞踏できる?」「文楽をテーマに創って」とか言われたりもしました。自由でいたかったのでオーディションは受けませんでした。色々なレッスンを受けましたが「自分なら、こういうものが欲しかった……」と思うことがありました。それを日本に帰ってからのレッスンの際に取り入れるようになりました。

「響紋」パリでの公演 撮影:VIRGILE BERTRAND

――作品発表はされなかったのですか?

帰る前に田保と2人で300席位の劇場を借り、現地のダンサーにも声をかけ公演をやりました。やりたいことを、真似だと何でも言われても、一度全部吐き出したかった。向こうで見たテクニックのイメージや印象を振りに起したりして、がむしゃらにやりました。劇場前でチラシを配ったり、キオスクで売っているエンターテインメント雑誌に情報を出したりすると、お客さんが入ってびっくりしました。劇場に行って観る文化がある。

――帰国後すぐにダンスカンパニーカレイドスコープ(La Danse Compagnie Kaleidoscope)を結成しました。

戻ってすぐに東京芸術劇場小ホール2を借りて公演を決めました。カンパニー名はフランスにいる時に考えました。名前が一幸なので辞書のKの欄を見ていると「Kaleidoscope」という言葉が出てきた。「めくるめく想い」とか「さまざまな印象」とか書いてあって、ダンスもそうだな、と思って。見る人の印象によって見え方が違うし、表現の仕方にしても違ったアプローチをすれば作品も変わってくる。カレイドスコープという名前でいこうと。

「CHAIN EFFECT」撮影:塚田洋一

――創設当時の様子を教えてください。

田保や同世代の仲間である布山さと美さんや坂木眞司くん、20歳くらいから教えていて在研中も待っていてくれた生徒が出てくれました。最初の『Procession-白鳥の歌が聞こえない-』は、カンパニー名を意識して様々なイメージの断片を紡いでいきました。1時間半近くありました。出演者は10数人いて、ソロ、デュオ、群舞と動かしました。

――創作の際に大事にしていることは?

このキャスト、メンバーでいこう!という時に、その人たちがリアルに動くヴィジョンがあります。自分が動くことをベースに振付ける人もいますが、僕は踊ってくれる人のヴィジョンが入ってくる。人が変われば動きのイメージも変わる。もちろん自分でテーマを決めて、この人、この人数で、という時もあります。音編集から始めることもあります。

――長編もありますが短めの作品が多いですね。

グループの人数が増えスケジュール調整が難しくなってきました。それに人数が増えると、一人ひとりに、あまり踊らせてあげられない。近いレベルの人を集めて20分で踊らせてあげたほうが、たくさん踊れるし、リハーサルも滞りなく進むということがあります。

「”形が””人が”語り始めると」撮影:塚田洋一

「KEISOU-景相-」撮影:塚田洋一

――多くの作品を創られていますが、いつも新しいアイデアがあり、挑戦を感じます。

動きにしろ、衣装にしろ1つのヴィジョンがあります。壁に寄り掛かっている設定から始めたいというような、ちょっとしたことからリハーサルを始めます。ダンサーに色々やってもらって、一番クオリティが高くて成立する出来事をピックアップします。振付は固めます。「ここの振りを創って」と任せると、その時間を自分が把握できなくなるので。

――2008年、神奈川・南林間にDance Brick Box(DBB)を設立された経緯は?

専用スタジオがないとリハーサル、作品創りが厳しい。教えでも外部スタジオではクラス後にコンクール指導ができなかったりします。DBBではクラス後にコンクールのクラスを見ています。スタジオパフォーマンス「Dance Show Case in DBB」は、ダンサーに創ることにチャレンジできる場があればと思いスタジオを借りる時に考えていました。小さなスペースですが「今創ったらいいな」という子に勧めていますし、立候補する人もいます。僕自身も、あの空間とは相性が良いみたいで、楽にできるというか好きですね。

「硬質の花」撮影:塚田洋一

「魚の背」撮影:塚田洋一

――2015年1月31日~2月1日に行う本公演は総力を結集したものになりそうですね。

2014年11月にKAAT神奈川芸術劇場で上演した『BARBAROI』、以前本公演でやった『ダンツァ・ディ・トランセ』それに新作『Eight Echoes』を上演します。『BARBAROI』は、儀式・祭りでダンスを踊ってコミュニケーションを取ったり、神を称えたり、神を模したりといったりすること――踊ろうという意思反応を出そうとしました。『ダンツァ・ディ・トランセ』には思い入れがあります。昔、バッハの「マタイ受難曲」で作品を創ったのですが、上手くできませんでした。リベンジしようと思ってカンパニー創設15周年公演(2011年)に創りました。修道女が病気を治す治療としてダンスをさせたことを「ダンツァ・ディ・トランセ」と呼んでおり、それをモチーフに創りました。『Eight Echoes』は、8人のダンサーが、いかに身体、動き、空間で反響し響きあうか――がテーマです。新作はクリエーション中ですが、シンプルにダンス、動くということをテーマにした作品を集めました。

「ダンツァ・ディ・トランセ」撮影:塚田洋一

――近年は舞踊コンクールの審査員を相次いで担当される等、指導的・求心的立場になられつつあります。ダンス界全体を見渡しての展望をお聞かせください。

コンテンポラリーダンス、現代舞踊といったカテゴライズがありますが、自分はどう言われても気にしていません。現代舞踊協会に関しては、最近若手育成としてソロを踊り、作品を創り、在外研修に行って戻ってきて成果発表する縦の路線を持たせようとしている。僕自身の個人的な活動でも縦のステップを踏むことを大事にしています。ダンスの世界には、プロデュースのプロフェッショナルがなかなかいませんが、職業として成り立つようにしていきたい。学校ダンスの指導にもどんどん行きたいし、皆が行けるようにしたい。

「danza」撮影:塚田洋一

――カンパニーとして、二見さん自身としての今後の抱負を教えてください。

カンパニーとしては変わらずに続けることができれば。若い子がどんどん入ってくれないと滞ってしまう。スタジオパフォーマンスでメンバーの単独公演やジョイント公演といったショーケースとは違う企画を考えています。自分自身としてはショートピースが続いているので、1時間くらいかけた10人前後の出る作品も創りたい。来年カンパニー創立20周年なので、スタッフとも話し合いをして方向性を探っていきたいと思います。

La Danse Compagnie Kaleidoscope
The World of Kaleidoscope 2015

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  • 【日時】 2015年1月31日(土)18:00開演
  •          2月1日(日)13:00/18:00開演
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  • 【会場】 全労済ホール/スペース・ゼロ
  • 【演出・振付・構成】 二見一幸
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  •  Eight Echoes
  •   【出演】 田保知里 加賀谷香  中村真知子 佐々木紀子
  •        幸内未帆 高杉あかね 構井晃道  二見一幸
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  •  ダンツァ・ディ・トランセ
  •   【出演】 小林啓子 佐藤伊都美 長谷川真奈美 石井麻莉子
  •        清水揚子 遠藤恵   辻慈子    松尾望   大野木純子  谷地藍
  •        川合杏奈 武安由宇里 樋口聖子   片山葉子
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  •  BARBAROI
  •   【出演】 田保知里  中村真知子 佐々木紀子 花村愛子
  •        高橋あや乃 小林啓子  佐藤伊都美 長谷川真奈美
  •        石井麻莉子 川合杏奈  竹田栄次  西澤光時  二見一幸
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  • 【スタッフ】
  •        照明:加藤学     音響:山本直   舞台監督:山下博之
  •        ビデオ撮影:立石勇人 写真:塚田洋一  音楽:NACHA
  •        衣装:増田桃子    衣装製作:MOMO  協力:プロジェクト直
  •        提携公演:全労済ホール/スペース・ゼロ
  •        主催:ダンスカンパニーカレイドスコープ
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  • 【料金】   チケット前売券4000円(税込)
  •        当日券4500円(税込)
  •        日時指定自由席
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  • 【お問合せ・チケットお取り扱い】
  •        ダンスカンパニーカレイドスコープ (平日10時~18時)
  •        Tel:042-705-9127
  •        Fax:042-707-7125
  •        d.c.kaleidoscope@nifty.com
  •        http://ldck-dbb.com/
  • 【ダンスカンパニーカレイドスコープ オンラインチケットサービス】
  •        ・予約後すぐに、お近くのセブン-イレブンでチケットを受け取れます。
  •        ・代金はチケット受け取りの際にセブン-イレブンでお支払いいただきます。
  •        http://ldck-dbb.com/