貞松正一郎(貞松・浜田バレエ団芸術監督)インタビュー ~原点を大切に、多くを学び、レベルを向上させたい

 神戸の貞松・浜田バレエ団は1965年、貞松融先生と浜田蓉子先生によって結成されました。1982年のローザンヌ国際バレエコンクールでプリ・ド・ローザンヌを受賞した貞松正一郎さんは、貞松先生、浜田先生のご子息です。正一郎さんの成長・飛躍と歩みを共にするようにカンパニーは発展し我が国有数のバレエ団としての評価を確立しています。同バレエ団の芸術監督を務める正一郎さんに、バレエ団の軌跡、現在、将来の展望を伺いました。

取材・文:高橋森彦(舞踊評論家)

貞松正一郎

――ローザンヌ国際バレエコンクールで入賞され、ロイヤル・バレエ・スクールに1年間留学されたのち東京の松山バレエ団で活躍されました。神戸に戻る経緯を教えてください。

 父が松山バレエ団出身ということもあり、僕が幼少より清水正夫団長、松山樹子先生をはじめ、清水哲太郎さん、森下洋子さんには可愛がっていただきました。ロンドンやニューヨーク、ギリシャでの公演も経験して(ルドルフ・)ヌレエフ氏ともご一緒できました。8年間踊って神戸に戻りました。両親から「自分たちは年をとってきたので帰ってこい」と。

――戻られた際に感じた貞松・浜田バレエ団の印象はいかがでしたか?

 当時は小学校での公演が多かったです。松山バレエ団では大きな舞台が多かったので正直ギャップはありました。でも子どもたちにとって一生に一度のバレエ鑑賞になるかもしれないこと、バレエを純粋に楽しんで観ているのに気づいてから、どんな舞台でも大切にと考えられるようになりました。現在もそうですが当時から学校公演があったことで、団員が育ってきたと思います。神戸に帰ってきて秋の「創作リサイタル」、全幕公演、12月の『くるみ割り人形』と恒例化し、学校厚生会や県民芸術劇場のお話もいただいたりして、全幕と創作の両方を数多く経験できたことを誇りに思います。

貞松・浜田バレエ団「くるみ割り人形」お菓子の国Ver. 撮影:古都栄二(テス大阪)

――団員は付属のバレエ学園で幼少から学んだ方たちがほとんどで「家族的な雰囲気がある」とよく言われます。貞松融先生、浜田蓉子先生のお人柄による所が大きいのでしょうが幹部の先生から若手までが一致団結してまとまっている印象を受けます。

 そう言っていただけて大変光栄に思います。家族的と言われるのは、やはり二人の人柄の影響が大きいでしょうね。団員が皆で舞台に向けての作業や教えの事などをケアし合うのも大きいですね。幹部の先生方と配役などを毎回書き直し、書き直し考えます。ベストの配役を心がけていますが、年間通して皆が舞台に立てるようにしながら若手に機会をあたえたり、ベテランも生かしたりするようにしています。

――瀬島五月さん(中川鋭之助賞を受賞し、新国立劇場バレエ団公演等でも主演)や森優貴さん(ドイツのTheater Regensburg Tanz/レーゲンスブルグ劇場ダンスカンパニーのバレエ芸術監督)ら国内外で広く注目される方たちが出てきましたし団員の層も厚いですね。

 中学・高校の六年間のジュニアバレエ団を経てその中から選抜された団員がほとんどで、全体のレベルが昔より上がってきていると思います。それとダンサーたちが「それぞれの役をどう生きるか」を考えて踊るようになってきていて、それが明確に舞台に現れてきたことを嬉しく思います。

貞松・浜田バレエ団 創作リサイタル26「ピアノ・ヴギ・ウギ」(振付:貞松正一郎) 撮影:田中聡(テス大阪)

――クラスも教えられていると思いますが、特にボーイズクラスからはこのところコンクールの上位入賞者も相次いでいますね。指導時に心掛けていらっしゃることとは?

 優貴君や、今いる男性団員ほとんどがボーイズクラス出身で20年教えています。今年の「こうべ全国洋舞コンクール」では男性ジュニア1部、2部ともに1位、シニア2位と客席で聞いた時、感極まりました。教えて育てる作業は大変です。皆様々な身体を持っているので、良い所とウィークポイントを分かって、一人ひとりが伸びて行くよう心がけています。男性にしか教えられない大きなテクニックやパ・ド・ドゥなどは、男性目線でパートナーのことも考えてサポートできるように教えています。人数が少なくなり辞めそうになった時期もありましたが、優秀なダンサーが数多く育ってくれて続けて良かったです。

――「創作リサイタル」では正一郎さんの作品をはじめ団員の創作を上演するとともに国内外の優秀な振付家の作品を取り上げています。演目をどのように決めていますか?

 団員が創りたいから創るという所から入ったのですが、創る人が固定してくることや、マンネリ化したので外部に依頼もするようにしました。東京でも上演した『眠れぬ森の美女』を振り付けてくれたユーリ・ン氏はロイヤル・バレエ・スクール時代の同級生です。オハッド・ナハリン氏の『DANCE』(『マイナス16』)は稲尾芳文さん(注:ナハリン氏の下で活躍し一時期彼の代わりにバットシェバ舞踊団芸術監督を務める)とのつながりがあって実現しました。スタントン・ウェルチ氏の『ア・タイム・トゥ・ダンス』を上演できたのは瀬島がロイヤル・バレエ・スクールの卒業公演で踊った縁からです。イリ・キリアン氏の『6 Dances』『小さな死 Petit Mort』などは、堤悠輔がオランダのカンパニーで踊っていた縁から上演ができました。名作を上演できたことを幸せに思います。新作にもトライして冒険もしなければいけませんし、団員全員参加としたいので苦労しています。

貞松・浜田バレエ団 創作リサイタル24「Memoryhouse」(振付:森優貴) 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

――近年「創作リサイタル」での指導をはじめ国内外から多くの指導者の方が訪れ、昨年度からヤン・ヌィッツさんを教師・バレエマスターとして招かれています。海外との交流がより活発になっていますがバレエ団に反映されていると思われることはありますか?

 海外から来た方は指導される際に良かったら良いと言うし、駄目な所でも「もう少しこうしよう」という前向きな指導です。日本だとすぐに「駄目」となってしまう。スタントン氏のリハーサルの時は、一つ一つのステップを明確に少しずつ進んでいきました。そういう風に創らなければ…と思います。レッスンでもそうですね。本当に光栄なことに昨年よりヤン先生に教えていただいているのですが、団員クラスでさえグランワルツまで行かない時があります。「これができていない!」と流さず妥協しないで追及されます。バレエとはそうあるべきです。プリエがあって、タンジュがあって、それができていないのになぜ先に進むの?グランバットマンになるの?みたいな。いまだに新鮮で多くを学んでいます。

貞松・浜田バレエ団 創作リサイタル24「6DANCES」(振付:イリ・キリアン) 撮影:古都栄二(テス大阪)

――今年の「創作リサイタル27」のラインナップについてお話しください。

 再演ですが、イリ・キリアン氏の『6 Dances』『小さな死 Petit Mort』は、つながっているものと聞いていますので、今回初めて同時に上演します。『For tomorrow』を振り付けていただく島崎徹氏には以前からお願いしたいと思っていました。バレエ団初演ですがオリジナルより男性を増やしてくださいました。動きは激しくて大変ですが若手を中心に皆一生懸命練習しています。優貴君の『Schwazer Regen 黒い雨』はレーゲンスブルクで発表された作品の日本初演となり瀬島、東沙綾、堤、水城卓哉が踊ります。東は振付家の意向による大抜擢です。長尾良子の『セルフ・プロデュース』は長尾先生ワールドの楽しい作品です。

――今後どのような作品を上演しようと考えていらっしゃいますか?

 来年は、全幕バレエに関しては『ロミオとジュリエット』を初演予定です。新作には時間がかかるため「創作リサイタル」は基本的に既存の作品を考えています。優貴君の再演作品もしくは新作、僕の『ピアノ・ブギ・ウギ』などを予定しております。それとは別に、現在色々なバレエ団が子どもたちの楽しめるバレエを創っていますよね。そういうバレエも考えていきたいと思います。

貞松・浜田バレエ団「コッペリア」 撮影:テス大阪

――最後に貞松・浜田バレエ団/学園の今後の運営方針を教えてください。

 現在6月に文化庁委託事業による学校公演、秋に「創作リサイタル」と全幕公演、年末に『くるみ割り人形』、春にバレエ学園発表会(2年に一度開催)あるいは「ラ・プリマヴェラ~春」があって5月に「こうべ全国洋舞コンクール」というスケジュールです。基本的にその流れで進めていきます。ヤン先生の指導により、身体の構造、使い方が分かり、怪我をする人が少なくなってきました。ヤン先生のように日本の現状をわかって、真っすぐにダンサーと向き合って情熱的に指導される先生とはなかなか出会わないかもしれませんが、将来的に外部からもバレエ団に合う先生の招聘を考えております。昨秋結成された一般社団法人日本バレエ団連盟に関西からの2団体の1つとして加盟し、この4月からは一般社団法人になりました。横のつながりも増やし、バレエ界に少しでも貢献出来るように、また多くのお客様に楽しんで頂けるように努力していきたいと思います。

【2015年度公演情報】

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  • 「創作リサイタル27」
  • 日時:    2015年9月22日(火・祝)
  • 開演:    18:00~
  • 会場:    神戸文化中ホール
  • 入場料:   S席5,000円/A席4,000円/B席2,000円(全席指定)
  •  
  • 『コッペリア』
  • 日時:    2015年11月3日(火・祝)
  • 開演:    17:00~
  • 会場:    あましんアルカイックホール
  • 演奏:    江原功指揮 びわ湖の風オーケストラ
  • 入場料:   SS席7,000円/S席6,000円/A席5,000円/B席4,000円/C席2,000円(全席指定)
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  • 『くるみ割り人形』
  • 日時:    2015年12月19日(土)お伽の国ver.
  •        2015年12月20日(日)お菓子の国ver.
  • 開演:    15:30~(両日共)
  • 会場:    神戸文化大ホール
  • 演奏:    江原功指揮 びわ湖の風オーケストラ
  • 入場料:   S席7,000円/A席6,000円/B席4,000円/C席2,000円(全席指定)
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  • お問合せ・お申込み: 貞松・浜田バレエ団 078-861-2609
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  • 貞松・浜田バレエ団/バレエ学園: http://www.sadamatsu-hamada.com/