MRB(松田敏子リラクゼーションバレエ)「バレエスーパーガラ2015」~17回目を迎え、ますます快調!関西が誇る一大バレエ・ガラ・コンサート

取材・文:高橋森彦(舞踊評論家)

 2015年のバレエ界を振り返る際に話題となるのが夏にガラ公演が相次いだことだろう。特に海外で活躍する日本人ダンサーに焦点をあてたガラ・コンサートが目立った。そんな中、大阪で1999年以降毎夏続き17回目を迎えた「バレエスーパーガラ」は、もはや老舗といっていいかもしれない。主催:MRB(松田敏子リラクゼーションバレエ)、芸術監督:漆原宏樹、演出・企画制作・プロデュース:松田敏子、演出・指導補佐:小嶋直也という座組みである。2015年8月2日、おなじみのグランキューブ大阪で盛大に催された。

松田敏子&小嶋直也『白鳥の湖』第3幕より 撮影:尾鼻文雄

 幕開けは漆原が振り付けた群舞『PLAY-ジャック・ルーシェ』。男性は恵谷彰ひとりで女性は中村美佳ら25名という異色のキャスティングによる洒落た群舞だった。漆原の作品は、いずれとっても音楽と緊密に結びついているので心地よく身を委ねることができる。

『PLAY-ジャック・ルーシェ』 撮影:尾鼻文雄

 松田と小嶋は彼ら自身が振り付けた(漆原が監修)『白鳥の湖』第3幕よりグラン・パ・ド・ドゥを踊った。「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」のアダージョとして知られるフレーズに始まりブルメイステル版で名高い音楽で構成される。華奢な松田が芯の強いパワフルな踊りを披露。小嶋はポーズの一つひとつが美しくテクニックもシャープだ。超絶技巧だけでなく構成的にも盛り上げ、魅せる。経験を重ねつつ鍛錬を積んでいる精華といえよう。

楠本理江香&青木崇『ライモンダ』第3幕より 撮影:尾鼻文雄

 関西を代表するエトワールの共演も見ごたえあった。楠本理江香&青木崇は5人のソリストを従え『ライモンダ』第3幕よりグラン・パ・ド・ドウを披露。楠本は近年の「バレエスーパーガラ」において漆原の振付によるドラマティックな創作の印象が強いがプティパ・バレエの様式の極みをきっちりと踊る。青木も品があり貴公子然としていた。

法村珠里&清瀧千晴『グラン・パ・クラシック』より 撮影:尾鼻文雄

 『グラン・パ・クラシック』よりグラン・パ・ド・ドゥを踊った法村珠里&清瀧千晴は共にボリショイのバレエ学校に学んだ。法村は一昨年の文化庁芸術祭で『白鳥の湖』オデット/オディールの演技を認められ新人賞を獲得したが、誇らしく自信をつけたのだろう。プリマたる華やぎと踊り心がいや増したのは天性の資質と鍛錬のたまものに違いない。好調をキープしている清瀧の精確で美しくダイナミックな踊りは観ていて爽快。コンクールの人気曲だが、プリンシパルの貫録があってこそ映えるのである。

前田奈美甫&恵谷彰『ゼンツァーノの花祭り』より 撮影:尾鼻文雄

 大阪出身で現在沖縄を拠点に各地で活躍する前田奈美甫はワガノワ仕込みの繊細で美しいラインの持ち主。恵谷と組んで『ゼンツァーノの花祭り』よりグラン・パ・ド・ドゥを踊った。細やかな足技はもとより上体の使い方も無理なく「これぞブルノンヴィル!」と膝を打つ秀逸な出来ばえ。指導にあたった小嶋の力もさることながら二人の吸収力、相性の良さもあるだろう。NBAバレエ団の土田明日香とGrand Theater Lodzの高谷遼という伸び盛りの気鋭による『海賊』第2幕よりグラン・パ・ド・ドゥも勢いがあった。

長田佳世&中家正博『胡桃割り人形』より 撮影:尾鼻文雄

 トリを飾った長田佳世&中家正博という新国立劇場バレエ団コンビによる『胡桃割り人形』第2幕より金平糖のグラン・パ・ド・ドゥはさすがの完成度。長田は威厳と包容力を感じさせる踊りで、全幕でなくともしっかり役柄を表現するプロの仕事だった。長田を端正に支える中家の表現力・技術も確かであり、昨年、永橋あゆみと組んだ『ドン・キホーテ』に続いて印象深く「バレエスーパーガラ」の中心となりつつあると感じた。

玄玲奈&武藤天華『âme』撮影:尾鼻文雄

 コンテンポラリー/創作も充実しておりベテランも活躍。玄玲奈が振り付け武藤天華と踊った『âme』、竹中優花と武藤による漆原作品『哀別-メロディー』、福谷葉子が振付の原田みのると共演した『Hallelujah』、島崎徹が荒瀬結記子と正富黎に振り付けた『Absence of story』というスタイルも味わいもことなる男女デュオ4本が並んだ。それに野間康子が振り付け、野間景、山本隆之、梶原将仁、正富黎が踊った『マグリットの手記』もあった。

竹中優花&武藤天華『惜別―メロディ』撮影:尾鼻文雄

 関西出身の若手の抜擢もあった。海外でのキャリアもある大野絵里奈は『眠れる森の美女』第3幕よりオーロラのグラン・パ・ド・ドゥを梶原将仁の好サポートを得て踊る。10人の小姓も付いての豪華版だが終始落ち着いた舞台運びだった。今春の「全国舞踊コンクール」決選でも目を引いた松浦梨歩は寺田智羽と『パリの炎』よりグラン・パ・ド・ドゥを伸び伸びと踊った。寺田もロシア国立エカテリンブルク歌劇場バレエ団で活躍する新星だ。志手美毬、若林侑希、田中利奈もそれぞれバリエーションを踊る機会を得て頑張った。

大野絵里奈&梶原将仁『眠れる森の美女』より 撮影:尾鼻文雄

 最初は松田の友人や大好きなバレエダンサーを集めて楽しい夏祭りのような感じで始めたというが、今や関西出身者中心に日本を代表する面々が揃う一大フェスティバルへと発展した。ルーティンワークに陥ることなく毎回若く有望なダンサーを抜擢して新鮮な血を加えたり、演目やオープニング&フィナーレの演出を工夫し観客に楽しんでもらえるようにしたりといった配慮を感じる。ガラ公演続きの夏に、あらためて老舗ならではの存在感をアピールした。来年が待ち遠しい。

松浦梨歩&寺田智羽『パリの炎』より 撮影:尾鼻文雄