Ballet Factory

高橋森彦 バレエ&ダンス逍遥

MRB松田敏子リラクゼーションバレエ
バレエコレクション2012 in OSAKA「バレエスーパーガラ」
~今年も充実をみせた関西バレエ夏の風物詩

関西バレエ夏の風物詩といえばMRB松田敏子リラクゼーションバレエ「バレエスーパーガラ」だ。今年でなんと14回目!演出・企画制作・プロデュースの松田敏子によると“私の友人や大好きなダンサーを集めて楽しい夏祭りのような感じで始めた公演”だという。近年は内外で活躍する個性豊かな日本人ダンサーたちも加わって一層みどころの多い公演になっている。大入り盛況のなか上演された全21曲から印象深い演技に触れたい。

MRB松田敏子リラクゼーションバレエ 撮影:Officeobana

中心となるのは、やはり関西のスターだ。『白鳥の湖』第2幕のパ・ド・ドゥを踊ったのがベテランの渡部美咲と山本隆之。折れそうなくらいに細くしなやかな肢体を駆使して囚われの姫の哀しみを痛切に謳いあげる渡部を包容力ある山本が包む。『海賊』第1幕よりパデスクラフを踊った松田と公私のパートナー小嶋直也の演技は息がぴったり。松田は昨年産後まもなく復帰した際には小嶋と『ラ・シルフィード』のパ・ド・ドゥを好演したが、今年も軽やかで品の良い演技をみせてくれた。瀬島五月とアンドリュー・エルフィンストンは同じ貞松・浜田バレエ団の川崎麻衣と上山棒名を従え『ドン・キホーテ』のグラン・パ・ド・ドゥを披露した。瀬島は、いま、もっとも輝いているプリマのひとりだろう。テクニック、表現力、音楽性が一体となった明るく華やかで品のある演技を観るのは至福だった。内外でキャリア豊富な実力者・法村圭緒は福谷葉子と『エスメラルダ』を踊ったのに加え芸術監督の漆原宏樹がモーツァルト曲に振付けた『へ長調』を楠本理江香と踊る。清らかな音楽にのせて叙情的かつ哀切さを感じさせるデュエットで心を打つものがあった。

MRB松田敏子リラクゼーションバレエ 撮影:Officeobana
MRB松田敏子リラクゼーションバレエ 撮影:Officeobana

関西出身の若手ホープもすばらしかった。まずなんといっても金子扶生である。地主薫バレエ団を経て英国ロイヤル・バレエ団に入団し役が付き始めている気鋭はロイヤル・バレエの先輩・蔵健太とともに『眠れる森の美女』のグラン・パ・ド・ドゥを披露した。若さに似合わない堂々とした踊りで特に上半身が雄弁。腕や背中はもとより胸部の表現も細かくニュアンスに富む。ほのかに立ち昇る色香が優美さを引き立てた。ロイヤル・バレエの大御所アンソニー・ダウエル直々の指導を仰いだというのもうなずける。「ロイヤル・スタイル」とはまさにこのこと!と膝を打つ思いだった。一時東京バレエ団にも在籍し現在は関西でがんばっている前田奈美甫は美しいスタイルとラインの持ち主。常連の恵谷彰と踊った『アレルキナーダ』グラン・パ・ド・ドゥで大きく飛躍した。ふたりの無言の会話が聞こえるかのような親密な演技が好ましく前田の愛らしさが映える。抜擢に応えるうれしい収穫だった。2012/2013シーズンから新国立劇場のファースト・ソリストに昇格する福田圭吾は矢上恵子新作『Witz』で持ち前の身体能力の高さを発揮し客席を沸かせた。

MRB松田敏子リラクゼーションバレエ 撮影:Officeobana
MRB松田敏子リラクゼーションバレエ 撮影:Officeobana

関西以外からのベテランの妙技が公演に広がりと深さをもたらした。先日、長年踊ったモスクワのボリショイ・バレエを退団し東シベリア・ウランウデにある国立ブリャート歌舞劇場バレエ団の芸術監督に就いた岩田守弘は自作ソロ『富士への登攀』を踊った。和服姿で音楽もテクノ系と邦楽をアレンジしたようなもの等使われる。オーソドックスなバレエの技法を基にしつつ、でんぐり返りしたり、お辞儀したり、川で水を救う仕草をしたりといった所作を織り交ぜ、ひょう逸な味わい。ベラルーシ国立バレエ団で踊っていた渡部美季とアレクサンドル・ブーベル夫妻の『ダイアナとアクティオン』のグラン・パ・ド・ドゥもダイナミックな超絶技巧の応酬と揺るぎないパートナーリングで魅せた。

MRB松田敏子リラクゼーションバレエ 撮影:Officeobana

最後は『バヤデルカ』よりパダクションを上演。ガムザッティは白石あゆ美、ソロルは秋元康臣というKバレエカンパニーの若手であるが、ここでは小嶋がブロンズアイドルを、法村が太鼓の踊りを踊って拍手喝さいを浴びた。といっても余興やお遊びではない。小嶋は6月に行われた牧阿佐美バレヱ団『ロミオとジュリエット』上演中にマキューシオ役のダンサーが怪我で急きょ降板した際、代役として立ち、軽やかな身のこなしと小気味よい足さばきをみせ健在を示したばかり。ここでも超絶技巧を優美に魅せ場を締めた。法村は平林万里、朝比奈毬恵とともに切れよく力強く踊る。関西きってのノーブル・ダンサーたる法村だが、ここでは骨太さを発揮し、ロシア仕込みの音楽性の良さにもあらためて感服させられた。パダクションソリストはじめ壷の踊りや扇の踊りの仕上げもていねいだった。

MRB松田敏子リラクゼーションバレエ 撮影:Officeobana
MRB松田敏子リラクゼーションバレエ 撮影:Officeobana

古典のパ・ド・ドゥ中心に創作/コンテンポラリー作品が程よく入り、最後は幕もので締める。加えて若手によるヴァリエーション4曲もあり、それぞれに一定の水準に達していた。オープニングに上演された漆原宏樹振付の『燦』(ビゼー曲)にも若手が出演している。出演者の顔ぶれが豪華になり演目の幅が広がっているが、関西の踊り手ことに若い才能を紹介するという姿勢が心強い。トップスターや経験豊富なスタッフと場をともにし、多くの観客の前で踊ることによってプロとして舞台に臨む責任感を感じ成長するはず。近年このガラでアンサンブルの一員として踊っていた前田の躍進など、それを証明していよう。ベテランの妙味、いまが盛りのスターの放つパワー、そして若い才能のみずみずしい感性が溶けあい充実していた。来年は15回目の記念すべき公演となる。早くも待ち遠しい。

MRB松田敏子リラクゼーションバレエ 撮影:Officeobana

撮影:Officeobana

【2013年度開催予定】

  • バレエコレクション2013 in Osaka
  • 2013年8月4日(日) 大阪国際会議場 グランキューブ大阪

高橋森彦

舞踊専門紙誌、日刊紙、美術誌、芸術批評誌、公演プログラム、公演チラシ、Web媒体等に公演評・解説・紹介記事・インタビュー記事を寄稿。 バレエ、コンテンポラリー・ダンスなどのほか演劇等も含めたパフォーミングアーツ全般に関心。
公式ブログ「ダンスの海へ」
http://d.hatena.ne.jp/dance300

MRB松田敏子リラクゼーションバレエ

http://mrb.matsudatoshiko.net//

「バレエスーパーガラ」2002-2005

「バレエスーパーガラ」2011