Ballet Factory

高橋森彦 バレエ&ダンス逍遥

主催:バレエシャンブルウエスト 共催:萌木の村 第23回「清里フィールドバレエ」
~大自然の下で繰り広げられるバレエの饗宴

山梨県・清里高原の観光施設「萌木の村」(代表:舩木上次)にて行われる「清里フィールドバレエ」は今年で23回目。大自然の下で繰り広げられる夢の饗宴は清里の夏の風物詩として定着した。が、気候の変化等野外上演にアクシデントは付き物であるし運営には様々な困難をともなう。23年間続く原動力は主催のバレエシャンブルウエスト率いる今村博明・川口ゆり子それに舩木をはじめとするスタッフたちの不断の熱意に他ならないだろう。

今年の「清里フィールドバレエ」のプログラムは4つ。16日間の会期中Aプロ『白鳥の湖』、Bプロ『かぐや姫-LUNA-』、Cプロ『おやゆび姫』を日替わり上演したほか開幕から2日間にはスペシャルプログラム「オープニング・コンサート&名場面集」を披露した。

Sプログラム初日を観た。まず新企画のガラ・コンサートから始まる。若手中心のダンサーたちによって『シンフォニー・イン・C 第3楽章』(振付:川口ゆり子)が上演されたのち、「バレエコンクール in 八王子」上位入賞者によるエキシビジョンが行われた。バレエシャンブルウエストが本年度から開催しているコンクール上位入賞者の特典である。まだ若い子たちにとってコンクールの場ではなく、野外で、しかも多くのお客さんの前で踊る機会は得難い。未来に羽ばたくバレリーナたちの熱演に惜しみない拍手が送られた。

佐々木万璃子「シルビアよりヴァリエーション」 撮影:小林雅之

エキシビジョンの最後には川口ゆり子バレエスクール出身で2010年度のローザンヌ国際バレエコンクール第3位(女子最高位)入賞を果たした佐々木万璃子が登場した。踊ったのは「シルビアのパ・ド・ドゥ」。四肢を伸びやかに用いつつアクセントの利いたアピールの強い踊りで、まだ10代とは思えぬほど堂々としている。大器ぶりを存分にみせつけた。

佐々木はローザンヌ受賞前から清里の舞台に参加している。ローザンヌでも臆することなく実力を発揮できた要因のひとつに、フィールドバレエという大舞台を踏んだ経験があるのではとないかと舩木は筆者に語ってくれた。なお佐々木は今回、『白鳥の湖』オデット/オディールを踊り好評を博したと伝え聞く。佐々木のさらなる活躍を願うとともに、清里から彼女に続く存在が必ず出て来るに違いない――。そんな期待で胸がふくらむ。

『白鳥の湖』 佐々木万璃子(オディール) 撮影:小林雅之
『白鳥の湖』佐々木万璃子(オデット) 撮影:小林雅之

さて、メイン演目は『白鳥の湖』のハイライトだった。通常の上演ならば第3幕、第4幕にあたる「宮殿」「湖畔のほとり」を上演。前半のバレエ・コンサートとは打って変わって、ここではベテランの見せどころを心得た演技を楽しめた。オデット/オディール役は橋本尚美。王子ジークフリートは正木亮。悪魔ロットバルトは佐藤崇有貴。

『白鳥の湖』より「湖畔のほとり」橋本尚美 撮影:小林雅之

橋本は「宮殿」の景で登場するや否やたちどころに王子や宮殿に集う人々を誘惑する。グラン・フェッテなどの大技に会場は沸いた。「湖畔のほとり」では、楚々としたたたずまいにクラシック・チュチュが良く似合う。二役の踊り分けを手堅くこなした。正木のジークフリートは「宮殿」の景においてオデットとオディールの間で悩むさまに説得力がある。佐藤の見せ場を心得たアクションの大きな演技は見応え十分だった。他にも吉本真由美・吉本泰久によるチャルダッシュ、深沢祥子・山田美友による2羽の白鳥などソリストたちの踊りも充実。バレエを気軽に楽しめる場であるからこそ観客に最善のパフォーマンスを見せたいと常に全力投球し手を抜かない姿勢には、いつも感服させられる。

『白鳥の湖』より「宮殿」橋本尚美・正木亮 撮影:小林雅之

フィールドバレエのすばらしさを実感したのが「湖畔のほとり」。湖畔で踊りたたずむ白鳥たちが、夜空や木々を背景に浮びあがる。その美しさに総毛立つような感動を覚える。永遠の愛を誓ったオデットとジークフリートが身を投げたのち、白鳥たちが毅然としてロットバルトと闘い、悪を打ち砕く。幻想的な情景が広がるなか強烈なまでの生命力を湛えて存在している白鳥たち。彼女たちが主役だといえるかもしれない――。そう思った。

第23回「清里フィールドバレエ」『白鳥の湖』より「湖畔のほとり」撮影:小林雅之

フィールドバレエの活動は清里だけに留まらない。東日本大震災発生直後には、「清里フィールドバレエ心の震災復興プロジェクト実行委員会」(代表:舩木上次、今村博明)が被災地を回りバレエ・コンサートを開催した。清里開拓の祖の名を冠した自動演奏オルガン「ポール・ラッシュ」をたずさえバレエシャンブルウエストのダンサーたちが東北各地を巡演。今年も継続して行われた。その活動に対し平成23年度 財団法人松山バレエ団顕彰において「特別賞」が送られた(今村・川口に対して)。今村・川口、舩木らの、飽くなき情熱と持続する志に敬服する。「清里フィールドバレエ」が末永く続くことを願いたい。

『かぐや姫-LUNA-』 撮影:小林雅之
『おやゆび姫』 撮影:小林雅之

撮影:小林雅之
(2012年8月1日~16日 「萌木の村」特設野外劇場 1日所見)

【次回開催】

  • 「第24回清里フィールドバレエ」
  • 2013年7月30日(火)-8月10日(土)[8/5休演日]
  • 『ジゼル』『コッペリア』を予定。

【バレエシャンブルウエスト次回公演】

  • 『くるみ割り人形』全幕
  • 2012年12月22日(土)16:00、23日(日)13:00&17:00、24日(月)16:00
  • 会場:八王子市芸術文化会館いちょうホール
  • 料金:全席指定6,000円

高橋森彦

舞踊専門紙誌、日刊紙、美術誌、芸術批評誌、公演プログラム、公演チラシ、Web媒体等に公演評・解説・紹介記事・インタビュー記事を寄稿。 バレエ、コンテンポラリー・ダンスなどのほか演劇等も含めたパフォーミングアーツ全般に関心。
公式ブログ「ダンスの海へ」
http://d.hatena.ne.jp/dance300

清里フィールドバレエ 公式HP

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バレエシャンブルウエスト 公式HP

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萌木の村 公式HP

http://www.moeginomura.co.jp/

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