TROISIÈME SYMPHONIE
DE GUSTAV MAHLER
JOHN NEUMEIER
BALLET DE L’OPÉRA NATIONAL DE PARIS

~壮大なノイマイヤー振付『マーラー交響曲第3番』パリ・オペラ座バレエ団 
ⓒ Laurent Philippe

 4月のパリ・オペラ座バレエ学校創立300年祭とほぼ同時期に、オペラ座バレエ団では、ノイマイヤー振付『マーラー交響曲第3番』がオペラ座バスティーユで上演された。2009年3月にレパートリーに入って以来4年ぶりの再演。4月9日から5月12日までの全12回の公演で、4月18日の公演の模様は現地の映画館で実況中継された。日本では7月12日から上映が予定されているので、ぜひご覧いただきたい。

 前評判には聞いてはいたものの、実際の舞台は、重厚な迫力に満ち、想像以上の素晴らしさ。ここでは中継日の公演を中心にレポートさせていただく。まずマーラーの音楽自体が名曲中の名曲で、サイモン・ヒューウェット指揮パリ・オペラ座管の演奏が清澄な調べを滔々と響かせたのに加え、パリ・オペラ座バレエ団の精鋭たちが音楽を見事に視覚化し、2時間にわたって大河のように壮大な「ダンス・シンフォニー」が繰り広げられた。

ⓒ Laurent Philippe

 初演は1975年。1973年にノイマイヤーがハンブルク・バレエ団の芸術監督に就任して3年目に創作されたものだが、若き日の振付家の研ぎすまされた知性と感性が見事に結合した傑作である。日本では、ハンブルク・バレエ団の1986年の初来日公演で上演され、イヴァン・リスカやリン・チャールズなど当時のソリストたちが熱演を披露した。なお、全曲初演に先立ち、第4楽章<夜>は、故クランコとシュツットガルト・バレエ団に捧げられ、1974年7月にシュツットガルトで初演されている。

 全体は6楽章からなり、<昨日>、<夏>、<秋>、<夜>、<天使>、<愛が私に語りかけるもの>という表題がつけられている。ほとんど出ずっぱりで登場する男(カール・パケット。当初予定のエルヴェ・モローは怪我のため降板)は、ノイマイヤー自身の分身であるかのように、過去を振り返り、夢や理想を追い求めてさまよい、やがて一人孤独な旅に出る。この大役を体当たりで真摯に演じたパケットは、公演の成功の立役者の一人と言ってよい。 

ⓒ Laurent Philippe

 第1楽章<昨日>は、パケットをはじめとする20名余りの男性群舞の迫力に幕開きから息を飲む。マチアス・エイマンが暴力的な動きで戦争のシンボルと化していたほか、ステファン・ビュリヨン、アレッシオ・カルボーネ、クリストフ・デュケンヌ、フロリアン・マニュネ、ヤン・サイズらの織りなす、一瞬の隙もないアクロバティックな群舞が壮観で、場内にはすでに熱気が立ちこめる。

ⓒ Laurent Philippe

 第2楽章<夏>では、ノルウェン・ダニエル&デュケンヌ、メラニー・ユレル&カルボーネの2組のデュエットと女性群舞がのどかな雰囲気を醸成。続く第3楽章<秋>は、抜群に手脚の長いローラ・エケの息の長い動きが夢の世界へ誘う。マニュネ、オーレリア・ベレ、サイズ、マチルド・フルステー、シャルリーヌ・ジーザンダネ、フロリモン・ロリウら粒ぞろいのソリストたちからは目が離せない。第4楽章<夜>では、3月の『カルメン』でエトワールに昇格したばかりのエレオノラ・アッバニャートが気を吐き、パケット、ビュリオンとのトリオは悲壮感さえ漂わせる。独唱はメゾ・ソプラノのアリーヌ・マルタン。

ⓒ Laurent Philippe

 そして第5楽章<天使>で、イザベル・シアラヴォラが登場するに及んで、舞台は一転して闇から光の世界へと変わる。シアラヴォラは、登場した瞬間から、そのあどけない表情や仕草、純粋無垢な美しさで、男=パケットのみならず観客の心をキャッチ。絶妙のプロポーションから繰り出される一挙手一投足が、まさに別世界から到来した天使そのものなのだ。さらに第6楽章<愛が私に語りかけるもの>のパ・ド・ドゥでは、パケットの見事なサポートにより、シアラヴォラは自由自在に宙を浮遊。超難度のリフティングには陶然とさせられる。最後に別離のときが訪れ、シアラヴォラは一人、舞台を横切っていく。この一歩一歩が何と崇高な美しさに満ちていたことか。

 嵐のような喝采。カーテンコールに登場したノイマイヤーも感極まった表情で、観客とともに感動を分かち合っていた。  

●<パリ・オペラ座へようこそ ライブビューイング2012〜2013>の詳しい上映スケジュール等は以下まで。
http://www.opera-yokoso.com/

●パリ・オペラ座バレエ学校300年祭の諸行事についてのレポートは続報の予定