藤倉大&勅使川原三郎
オペラ『ソラリス』世界初演を巡って
SOLARIS :DAI FUJIKURA & SABURO TESHIGAWARA
2015年3月5日初演 THEATRE DES CHAMPS-ELYSÉES
PARIS ー LILLE ー LAUSANNE

 ポーランドの作家スタニスワフ・レムの同名の小説(邦題:ソラリスの陽のもとに)をもとに、ロンドンを拠点に活躍する気鋭の作曲家、藤倉大とダンス界の旗手、勅使川原三郎がタッグを組んで制作した新作オペラ『ソラリス』が3月5日パリ、シャンゼリゼ劇場で世界初演された。筆者は7日の公演を取材。とかく現代オペラは難解と思われがちだが、『ソラリス』は、音楽とダンスの微細な感性が一体となって、超常現象を引き起こす惑星ソラリスの神秘に迫ったもので、舞台芸術の新たな方向性を示して画期的だった。演奏は、エリク・ニールセン指揮アンサンブル・アンテルコンタンポラン。パリに続いて3月24、26、28日リール歌劇場、4月24、26日スイスのローザンヌ歌劇場と2都市を巡演した。

カーテンコール:中央=藤倉大と勅使川原三郎、右=佐東利穂子

© Mayumi Watanabe

 4月11日には、フランス公演を終えて帰国した勅使川原が、本拠地のカラス・アパラタスで『ソラリスー私の予感が焦点を合わせた構造としてのダンス』と題した特別レクチャーを開催し、写真や映像を交えて二時間にわたって熱弁を振るった

 オペラ演出は、文化村の『トゥーランドット』、フェニーチェ座の『ディドとエネアス』、エクサンプロヴァンスの『アシスとガラテア』に次いで4作目。稽古は2月初めから一ヶ月かけてパリで行われ、台本から舞台美術、照明、衣裳、振付、演出まで全て一人でこなすまさにトータル・アートと言えよう。

 登場人物は4人で、一役を歌手とダンサーで演じるなど文楽に通ずるユニークな手法が取られている。とりわけ豪華なダンサーの面々がダンス・ファンにはたまらない魅力だった。心理学者のクリス・ケルヴィンにNDTで活躍したバスラフ・クニェス、亡妻ハリーに佐東利穂子、クリスを迎える科学者のスナウトにパリ・オペラ座エトワールとして一世を風靡したニコラ・ル・リッシュ、自殺した科学者ギバリアンに勅使川原自身。まさにダンスの化学反応を堪能させるコラボレーションとなった。

 勅使川原によれば、もともとタルコフスキーの映画が好きで、超常現象が内面をあぶり出すことに関心を持ったという。
「死んでしまった妻ハリーが、ある朝そこにいる。これはソラリスが作った形だけの表現でしかない。そのため“コピー”という言葉を何度も使った。クリスには妻と喧嘩して自殺させてしまった罪の意識がある。宇宙の話だが、実は人間の話なのです」

 ダンサーを起用した理由についてはこう語る。
「歌手は歌に専念することにしてもらったが、我々にも演技ができるのだと最初は反論されてしまった。しかし歌手にできることは限られている。繊細で微妙な表現で、人格は多様であることを伝えたかったので、歌手には演技をさせなかった」

 レクチャーの最後に「今回の仕事は、ダンスがいかにオペラの中にあるか、人間を一人称でなく他人称で演じることが可能なのか、妄想や夢をいかに表現するか、考えるきっかけとなった」と結んだ。

 世界をまたにかけて活躍する二人の日本人アーティストによるこうしたコラボレーションが、いつの日か日本から世界へと発信されることを願いたい。

 なお、勅使川原とKARASは、11月に再びシャンゼリゼ劇場に招かれ、以前シャイヨ劇場で紹介した『鏡と音楽』を上演する予定で、今後も内外での充実した活動が期待される。

ギバリアン(勅使川原三郎)© Vincent Pontet

中央=ハリー(佐東利穂子)とクリス(バスラフ・クニェス)
左=ハリー(ソプラノのサラ・タイナン)、右=クリス(バリトンのリー・メルローズ)
© Vincent Pontet

スナウト(ニコラ・ル・リッシュ)とクリス(バスラフ・クニェス)© Vincent Pontet

ハリー(佐東利穂子)とクリス(バスラフ・クニェス)© Vincent Pontet

スナウト、ハリー、クリス © Vincent Pontet

ハリーとスナウト © Vincent Pontet

消えるハリーを見つめるクリスとスナウト © Vincent Pontet


【国内公演の予定】

  • 「アップデイトダンス」シリーズ
  • No.20『ペレアスとメリザンド』
  •  
  • 出演:  勅使川原三郎、佐東利穂子
  •  
  • 日時:  2015年
  •      5月13日(水)20:00
  •      5月14日(木)20:00
  •      5月16日(土)16:00
  •      5月17日(日)16:00
  •      5月18日(月)20:00
  •      5月19日(火)20:00
  •      5月20日(水)20:00
  •  
  • No.21『神経の湖』
  •  
  • 出演:  勅使川原三郎、佐東利穂子
  •  
  • 日時:  2015年
  •      5月25日(月)20:00
  •      5月26日(火)20:00
  •      5月27日(水)20:00
  •      5月28日(木)20:00
  •      5月29日(金)20:00
  •      5月30日(土)16:00
  •      6月1日(月)20:00
  •  
  • 料金:  一般 / 予約2,000円[当日2,500円
  •      学生 1,500円 (予約・当日共に)
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  • 予約:  メール:updatedance@st-karas.com
  •      電話:03-6276-9136
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  • 7月 シアターX連続公演

  • 『青い目の男』ブルーノ・シュルツ「夢の共和国」より
  • 『ハリー』 小説「ソラリス」より
  •  
  • 日時:  2015年
  •      7月 8日(水)19:30開演 『青い目の男』
  •      7月 9日(木)19:30開演 『青い目の男』
  •      7月10日(金)19:30開演 『ハリー』
  •      7月11日(土)16:00開演 『ハリー』
  •      7月12日(日)16:00開演 『青い目の男』
  •  
  • 劇場:  東京・両国 シアターX(カイ)
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  • 出演:  勅使川原三郎 佐東利穂子 他
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  • 料金:  全席自由・税込・入場整理番号付き
  •      一般:前売3,500円/当日4,000円
  •      学生・シニア(65歳以上) :2,500円(各回20枚限定・先着順)
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  • 問い合わせ:
  •      TEL:03-3682-7441(KARAS)
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