Ballet Factory

渡辺 真弓 ようこそ劇場へ

新国立劇場バレエ団『アンナ・カレーニナ』

新国立劇場バレエ団 写真=鹿摩 隆司
新国立劇場バレエ団 写真=鹿摩 隆司
新国立劇場バレエ団 写真=鹿摩 隆司
新国立劇場バレエ団 写真=鹿摩 隆司

 新国立劇場の3月公演は、ボリス・エイフマン振付の『アンナ・カレーニナ』全2幕。初演は2005年。2010年に新国立劇場のレパートリーに入り、今回は再演。 トリプル・キャストが組まれていたが、17日昼の部、本拠地エイフマン・バレエからの客演キャストの公演を見た。
  こうしたドラマティク・バレエは、中劇場のようなまとまった空間で見ると、登場人物の表情や表現が一層ダイレクトに伝わってくる強みがある。 前回も迫力ある舞台が展開されたが、今回も、ゲストの主役陣をはじめ、新国立劇場ダンサー達の熱演によって、新たな感動を呼び起こした。
  それにしても、アンナのニーナ・ズミエヴェッツ、ヴロンスキーのオレグ・ガビィシェフ、カレーニンのオレグ・マルコフのゲスト陣は、揃って長身の上、その大柄な身体から繰り出される動きは、ダイナミックそのもの。舞台のプロセニアムを飛び越えてきそうな、凄まじいエネルギーに圧倒される。フォーサイスではない が、宙に身を投じるような、極限まで身体を伸展させた振付は、主人公たちの心象をえぐり出すようだ。
  音楽は、チャイコフスキーを主に、現代音楽を取り入れたもの。例えば、幕開きに響くのは、有名な『弦楽セレナーデ』だが、曲想が盛り上がったところに、アンナとヴロンスキーの出会いの瞬間を当てはめたところなど心憎い。 交響曲第6番『悲愴』で、アンナとヴロンスキーが激情のままに踊る第1幕の場面や、 二人が群舞の大河に飲まれるように踊る第2幕の場面などは、劇的昂揚が最高潮に達し、作品のハイライトと言えるだろう。ロシア音楽に対するロシア人独特の感性の鋭さが感じられた。
  群舞の見どころも多い。若干ベジャールやプティの影響の跡を感じさせるが、第1幕の『マンフレッド』の群舞や、第2幕の『テーマとヴァリエーション』でのカーニバル風景、デイヴ・ミラー他の電子音楽によるアンナの妄想シーン、そしてラストの鉄道員たちの車輪の回転を想起させる群舞など、 粒の揃ったアンサンブルに、バレエ団の充実ぶりが伺えた。

写真=鹿摩 隆司

渡辺真弓

舞踊ジャーナリスト 10歳でバレエを始め、大学で舞踊教育学を専攻。 オン・ステージ新聞社編集部勤務を経てフリー。 1991年~2006年パリ在住。専門誌紙や公演プログラム等に寄稿。
公式ブログ
http://blog.livedoor.jp/balletpromenade/

新国立劇場バレエ団

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