Ballet Factory

渡辺 真弓 ようこそ劇場へ

バレエ・ダンサーの卵たちの情熱のドキュメンタリー
『ファースト・ポジション 夢に向かって踊れ』

『ファースト・ポジション 夢に向かって踊れ』
『ファースト・ポジション 夢に向かって踊れ』
『ファースト・ポジション 夢に向かって踊れ』
『ファースト・ポジション 夢に向かって踊れ』

 12月にBunkamuraで公開されるこの映画は、2010年にニューヨークで行われた国際バレエ・コンクール<ユース・アメリカ・グランプリ>に挑戦する子供たちの姿をとらえたものである。 このコンクールは、アメリカをはじめ世界有数のダンススクールで奨学生として学ぶ機会を与えるアメリカで唯一のバレエ・コンクール。 毎年ニューヨークで開催され、国籍を問わず、9〜19歳のダンスを学ぶ生徒を対象にしている。 2000年、ボリショイ・バレエ団出身のラリッサ&ゲナディ・サヴェリエフの二人によって創設された。 ローザンヌ国際バレエ・コンクールと並び、プロ・ダンサーになるための登竜門として知られる。

 製作、監督、編集のベス・カーグマンは、ジャーナリスト出身で、子供時代にバレエを習っていただけに、バレエに対する愛はひときわ強く、随所に温かい眼差しが感じられる。 この映画を撮影するきっかけとなったのは、たまたま<ユース・アメリカ・グランプリ>の決勝戦の会場に足を踏み入れたこと。 若いダンサーたちの芸術的な演技に圧倒され、再びバレエへの情熱を呼び覚ますこととなったそうである。

 映画でクローズアップされるのは、6人の少年少女たち。 ナポリ在住の米海軍医の息子アラン・ベル(11歳)は、デニス・ガニオ(マチュー・ガニオの父)に師事する、天使のように愛らしい少年だ。 決選では、師直伝の、プティ振付『こうもり』のヨハンのソロを達者に踊り、最優秀舞踊賞を受賞。 イスラエル出身のガヤ・ボマー・イェミ(11歳)は、アランの親友で、個性的な踊りで、銅メダルを受賞する。 アフリカ、シエラレオネ出身のミケーラ・デ・プリンス(14歳)は、内戦で両親を失い、4歳の時に、ニュージャージーのユダヤ人夫婦の養子になる。 黒人であることへの偏見と怪我を克服して、見事ABTのスカラーシップを獲得する。 コロンビア出身のジョアン・セバスチャン・ザモーラ(16歳)は、既にプロの風格をたたえたダンサーで、念願の英国ロイヤル・バレエ・スクールに留学を果たす。 イギリス人実業家の父と日本人の元ピアニストの母の間に生まれたミコ・フォーガティ(12歳)と弟のジュールズ・ジャービス・フォーガティ(10歳)。 才能豊かな姉のミコに対し、弟はバレエを断念してしまうが、笑顔をたやさず、バレエに打ち込む姿には癒される。ミコは銅メダルを受賞。 アメリカの高校生、レベッカ・ハウスネット(17歳)は、恵まれた条件の持ち主。努力が実って、最終的にプロのバレエ団からの誘いを受けることになる。

 ダンサー達が、成功へのプレッシャーや怪我や苦痛に耐えながら、ひたすら目標に向かって、最善を尽くす姿がまぶしい。  さらに、カメラは、厳しくも献身的に彼らを支える家族や教師達の姿を映し出し、胸を打つ。

 驚くべきは、まだ10代とはいえ、彼らのパフォーマンスには、プロ顔負けのパーソナリティや魅力が備わっていることだ。 表彰式の場面は、見ている側も結果発表に胸がドキドキしてしまう。入賞できなかった者にも、後日、バレエ団から入団の誘いの連絡が寄せられるなど、最後まで感動的だ。

「夢は手に届いた!」と感無量のジョアンの言葉がひときわ印象に残る。近い将来、プロとなった彼らに、舞台で再会できる日もそう遠くないことだろう。 バレエ・ファンのみならず、より多くの人に見てほしいドキュメンタリーである。

(C)First Position Films LLC 12月 Bunkamura ル・シネマ他全国順次公開
 配給:セテラ /ミモザ・フィルムズ  2011年製作、アメリカ映画、94分 HD撮影

渡辺真弓

舞踊ジャーナリスト 10歳でバレエを始め、大学で舞踊教育学を専攻。 オン・ステージ新聞社編集部勤務を経てフリー。 1991年~2006年パリ在住。専門誌紙や公演プログラム等に寄稿。最新刊『名作バレエ50鑑賞入門』(写真:瀬戸秀美/世界文化社)。
公式ブログ
http://blog.livedoor.jp/balletpromenade/

『ファースト・ポジション 夢に向かって踊れ』